前回の「Mt.富士ヒルクライムのヒルクライム偏差値」でデータ分析を行い、パワーウェイトレシオの分布を示した。出てきたデータから貧脚および剛脚の定義を考えたい。
剛脚とは自転車乗りとして身体能力が高いことを表す言葉である。テクニックやメンタルも含めて「あの人は剛脚だ」という言い方があるかもしれないが、ここではフィジカルに焦点を当てる。貧脚とはフィジカルが未開発な自転車乗りということになる。
属する集団によって相対的に貧脚にも剛脚にもなりうるが、ホビーレーサーを前提として具体的な数値で考える。そうすると絶対的なパワーを示すFTPや登坂性能を示すPWRが剛脚の指標として浮かんでくる。
自転車探検では「成年の男性に関しては、初心者はFTP=200〜230W、中級者はFTP=280〜350Wそして上級者はFTP=400W〜」という記述がある。
しかし、体の大きさとFTPの絶対値の大きさは密接に関連しているので、強さの指標としてわかりにくいところがある。PWRが同じ4.0W/kgでも体重50kgではFTP200W、体重100kgならFTP400Wとなり、体格によってまちまちとなる。
検索していくうちに、Yahoo!知恵袋の「ロードバイクに関する質問」で興味深い問答を発見した。
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Q: ロードバイクに関する質問です。
ブログを拝見していると「剛脚」や「貧脚」といった記事を見かけますが
どのような基準で判断されているのでしょうか?
具体的な数値で回答頂けると幸いです。
宜しくお願い致します。
ベストアンサーに選ばれた回答
A: ホビーレベルならこれでいーんでね?
↑4.9w/kg剛脚
4.5w/kg優脚
4.0w/kg並脚
3.5w/kg低脚
↓3.0w/kg貧脚
普通の草レースの平均は3.5w/kgぐらいでしょう…。
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妥当な基準のように思えるが、Mt.富士ヒルクライムの分析結果と照らし合わせると、回答者の基準が少し高いように思われる(回答者の置かれている母集団の脚力レベルが相対的に高い)。そこで若干の変更を加え、以下のような剛脚-貧脚仕分けを行った。
図1 ホビーレーサーの剛脚ピラミッド
出所:筆者作成。図中の%は「第11回Mt.富士ヒルクライム(年代別総合男子及び主催者選抜)」の推定PWR(60分)の割合である。
PWRはFTPよりは使えるかもしれないが、上図だけを見ると怪しいところが出てくる。例えば、仮に白鵬関の60分FTPが350Wだとする。5秒の値ならもの凄いパワーになるかもしれない。でもPWRは約2.3W/kgとなる。このPWRのみをもって彼は貧脚であると断言することができるだろうか。
一方でプロロード選手はおしなべてPWRが5.0W/kg〜であることからすると、PWRは自転車乗りの戦闘力を表すものとして、最もわかりやすい指標ではある。
後付けとなるが、Coggan氏のパワトレ本にあるパワープロフィール一覧表の分類と似たものとなった。なお優秀(カテゴリーI)より上はプロレベルとなるので、ホビーレーサーの域を超えてしまう。
優秀(カテゴリーI) :4.6〜5.3W/kg →剛脚
上級(カテゴリーII) :4.0〜4.7W/kg →優脚
よい(カテゴリーIII) :3.5〜4.2W/kg →良脚
まずまず(カテゴリーIV) :3.0〜3.7W/kg →並脚
普通(カテゴリーV) :2.4〜3.2W/kg →低脚
一般(トレーニングなし):1.9〜2.5W/kg →貧脚
さらに先行研究を当たれば、それぞれのカテゴリーで次のレベルに行くためのおおよその練習量(例えばL4で300時間)とかがわかりそうな気がする。なんだか資格試験の合格必要勉強時間みたいになってきたのでここまでとする。
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