初心者のジョギングシューズインプレ
以下、今年のラン走行距離30kmの初心者による妄言である。初心者ですらないかもしれない。
一般的にジョギングシューズなどというカテゴリはないかもしれないが、私の中ではカーボンシューズとジョギングシューズの2種類しかない。シューズに詳しくなればいずれ分類が増えるだろう。
今回試着したのは以下の3種類である。
・アシックス ゲルカヤノ28
・ニューバランス FuelCell PRISM v2
履いてほんの少しだけ走った感じ
ハイペリオンテンポ >= FuelCell PRISM v2 >>>>>>>>> ゲルカヤノ28
・ハイペリオンテンポ
「ジョグならアシックスでいいか」という固定観念を崩された一足。これといった特徴はないのだが、履いた瞬間からフィットする感じがあり何となく足を運びやすい。素直に足が出るというのかな。
業務用発泡スチロールみたいなものを底にくっつけただけの見た目は、大げさに言えば最悪の部類に入る。しかし、とても良いシューズであることが察せられる。デザインがあまり好みではないが、間違いなく選択肢に入る逸品。デザインがいいか悪いかではなく、走りやすいかそうでないかが重要だと思う。
・FuelCell PRISM v2
ハイペリオンテンポと印象が似てて選ぶ側としては困る。それだけ良くできているということだろう。FuelCell TCと違い、接地感が硬めで安定性がある感じ。やはり足を運びやすく履き心地も申し分ない。
アッパーのフィット感はハイペリオンテンポに軍配が上がる。今年30kmしか走っていない私が言うのもなんだが、着地した時に前足部(中足部?)での右と左の2点着地のような感覚にかすかに違和感を覚えた。ただ、価格も考慮に入れるとFuelCell PRISM v2の方に票が多く入るような気がする。
・ゲルカヤノ28
「とりあえず初心者はこれを買っておけ」というシューズなのだろう。見た目もそこそこいいし、実際に試着前まではこれを買おうと思っていた。28という時点で相当熟成されているのがわかる。履いた印象として、とにかくしっかりとした作りであるというのは感じられるものの、中足部でグニョっと沈み込むような感じが違和感でしかなかった。変なものに足を突っこんだ感がある。
グニョ感がゲルによるものか、ミッドソールやインソールの柔らかさによるものなのかは不明だが、足腰には優しいのだと思われる。着地時の感触の好みというのは千差万別ということか。もしかしたら怪我した際にはお世話になるかもしれない。
初心者のカーボンシューズインプレ
カーボンシューズとは、機材に仕事をさせることで少しだけ楽をして記録を狙うためのシューズだと認識しているので、初心者が履くことに何の意味があるのだろうか、とは思っている(店員さんはそんなことは口に出さないが)。
しかし、最新の機材というものに関心があるため、カーボンシューズを試し履きすることにした。
試し履きをしたのは以下の4種類である。
・ニューバランス FuelCell TC
・アシックス Magic Speed
・プーマ Deviate Nitro
・ホカオネオネ Carbon X2
履いて跳ねた感じの印象
Magic Speed > Deviate Nitro >> FuelCell TC >>> Carbon X2
・FuelCell TC
履きやすく見た目が良い。反発感とフカフカ感の両方を感じる。フカフカ感がラスト5kmでどう作用するのかは走ってみないとわからない。割高感あり。
・Magic Speed
足を入れた時のフィット感と安定性はさすがアシックス。足型が合っているのだろう。ただし、初心者が期待するカーボン感はない。玄人向けか?
・Deviate Nitro
「ほとんど走っていません」と店員さんに伝えたところ即座に出てきたのがこのシューズ。跳ねるのか転がるのかよくわからない感じ。deviate(逸脱)というよりむしろその逆では?
・Carbon X2
見た目とは裏腹に硬いと感じたシューズ。足型のせいなのか何となく合わない感じ。とは言っても、実際に走り込んでみなければわからない。Bondi Xを試した方がよかったかも。
結局、決めきれないままお店を後にした。ペースがどうとかキロO分がどうとかの専門用語が飛び交っており、割と楽しい感じのショップであると思われる。
中学受験と自転車レースの共通点
私はホビーレーサーである。ただしレベルは低い。早速本題に入るが、中学受験と自転車レースには奇妙なほどに共通点があることに気がついた。
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1.機材スポーツである(資金力が大事)
ホビーレースの一番下のカテゴリでもパワーメーター搭載のカーボンロードにディープホイールは当たり前である。どんなに少なく見積もっても軽く30万円オーバーするだろう。レース会場には50万100万のロードバイクがたくさんあるため、しばしば盗難事件も起こるという。
中学受験はケタが1つ違うが、中学受験の専門塾にかかる金額は小4〜小6でおよそ200万から300万円である。小6の追い込み期に個別指導塾や家庭教師でドーピングをさせると、数十万円が追加的に飛んでいくらしい。「中学受験をわらう」というサイトでは「諭吉」が頻出ワードとなっている。同サイトの黒先生の塾では、偏差値が微妙な子に対しての搾取が凄まじいケースもある。
遊びで走っているアマチュアがレースのために20万、30万のホイールを調達するのは一般的にバカげているが、中学受験で大量の諭吉を投入することはそれほどバカげた行為ではないかもしれない。
そもそも資金力に乏しい家庭は中学受験というレースに参戦することが難しく、所得格差がレースへの参入障壁となるところも見逃せない。SES(社会階層)の差が教育格差を生んでおり、それが所得格差の固定化に一役買っているという研究報告もある(詳しくは松岡の『教育格差』を参照)。
自転車レース的に言えば、ローリング中に位置取りが決定しており、機材、脚力、技術の揃ったご子息は先導バイクのクラクションと同時にリアルスタートを切る。先頭集団は400W以上で緩い坂を駆け上り、何の準備もできていない多くの子を置き去りにする。地脚(地頭)のある子は何とか集団に復帰できるが、その他大勢はわけもわからぬまま中切れを起こし、第2、第3集団を形成させられる。先頭集団は遥か前方を走っており、二度とその背中を見ることはないだろう。
2.ある種のコミュニティがある
地域でそれなりに気合の入った走りをしていると、そのうちある種のコミュニティを知るようになる。レースフリークの集まりだ。そこで集団走行や駆け引きの初歩を学ぶと同時に、仲良く練習会(または殺し合い)が行われる。1回で来なくなる人もいれば、毎週のように参加する人もいる。
中学受験ではそれは塾にあたるかもしれないし、あるいは知り合い、専門職、親戚の緩いつながりがコミュニティにあたるかもしれない。子どもが順調に成長すれば、その先でまた別のコミュニティと出会うだろう。ある種の情報源や経験にアクセスするためのワームホールと言っていいかもしれない。ワームホールに入るためには、運の良さだけではなく、自分や親の力によって基礎的な能力が底上げされている必要がある。
レースでの効率的な走り方というのは、経験上、ネットで教わるものではない。仲間との関わり合いで習得していくものである。そしてそれはある特定のコミュニティでしか得られない(お金を払って集団走行を行う何とかコーチングというものもあるにはあるが)。
3.落車する(全落ちする)
レースに落車は付きものである。例えば先頭集団を走っていても、下りコーナーの荒れた路面でスリップダウンしてしまうことがある。密集した集団であれば、落車に巻き込まれることもある。まれにローリング中の落車も起こる。
落車をしても身体やバイクがノーダメージならすぐに走ることができるが、そのまま救急車で運ばれることもある。
中学受験における落車とはすなわち全落ちのことである。2月1日〜6日(首都圏に限る)に行われる私立中学の受験で全ての学校に落ちることである。2月以前には想定していなかった中学を受験するのも全落ちに近い。レースに参加すれば「二月の敗者」としての屈辱を味わうリスクは誰にでもある。
全落ちのパターンとしては、親が無理目の志望校を受けさせているケース、また1、2日目の受験に失敗して親子のメンタルがやられるケースが見受けられる。近年では受験の合否は当日または翌日にネットで知ることができるというので、昔のことしか知らない者からすると驚きだ。
もちろん落車をしても、今までの訓練により鍛えられた能力が失われるわけではない。再び力強く走り出すその背中が眩しく見えることもあるだろう。ただし、一度の落車の経験を引きずったまま、深海魚と化して深く沈んだ中学生活を送ることもあるらしい。なお、中学受験に成功しても深海魚になるリスクはある(詳しくは「中学受験をわらう」を参照)。
4.向き不向きがある(才能が重要)
もはや陳腐化した「ホビーレーサーの剛脚ピラミッド」で示唆したように、到達できる身体能力(FTP)には上限がある。「Zwift-MMP判定ツール(ZMP)」を利用したことがある人はわかると思うが、ある程度まで鍛えた場合には、脚質はそうそう変わるものでもない。才能はすでに与えられているものであり、努力でどこまで伸びるかは神のみぞ知るところであろう。
自転車乗りの能力(あるいは才能)を示すFTPやZMPにあたるのが、中学受験の偏差値である。中学受験では偏差値55〜60のあたりに壁があるそうだ。これは才能の壁なのか努力の壁なのかはわからない。この場合の偏差値というのは、中学受験をする集団(≒大手塾生)における偏差値であり、日本の小学6年生全体を母集団とする偏差値ではない。
これは憶測だが、才能が重要となってくるのはおそらく算数だろう。遺伝子と環境の影響を分析した行動遺伝学の報告によると、算数・数学の能力は80%程度は遺伝の影響があるらしい(だからと言って努力が無駄なわけでは決してない)。身長や体重は90%、性格や気質は50%程度とのことである。
中学受験の算数は公立の小学校で習う算数を逸脱している。小学算数をベースにはしているが、実際にはSPIの非言語、公務員試験の数的推理に近い。パターン認識さえしてればいいというものではなく、パターンを習得した上で、問題に応じて即興でパターンを組み合わせて論理的に考える能力が必須である。算数の過去問をちょっと眺めた限りでは、偏差値の高い中学ほどその組み合わせが複雑かつ高度であるという印象を受ける。
自転車レース的に言えば、スプリント、30秒全開、1分走、5分走、ペースでの高速巡航、坂での高ケイデンスまたは低ケイデンス、ダンシング、下りでのエアロ姿勢、コーナーの立ち上がり、ローテーションや掛け合い(できれば不特定多数のメンバー)などを丁寧に練習した上で、レースという不確実性の高い状況下で自在に繰り出せるようになりましょう、ということである。これはガチレースそのものを楽しめる度胸というかセンスがないと、なかなかできないのではないだろうか。
才能とは直接関係ないが、コミュニケーションを取ることも重要である。集団内のコミュニケーションもそうだが、プロのレースでは無線での意思疎通により集団の様子が一変することがある。
いろいろと口で言うのは簡単だが、行うのは実に難しい。多分レースをしたことのない人にとっては意味不明だったかもしれない。私は中学受験の経験者ではないので詳しくはわからないけど、知能や学力以外にも必要な才能がどうもあるらしい。
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以上、少なくとも4つの要素について中学受験と自転車レースに共通するものがあるとみている。なぜ似たような要素が多いのか。一言で言えば、両者とも効率性を追求せざるを得ないからではないだろうか。
他には強者優先という要素も似ているかもしれない。「二月の勝者」の黒木先生曰く、弱者は月謝を運ぶだけの「お客さま」とのことである(ただし、弱者の底上げが実は塾にとっても重要であると説く専門家もいる。詳しくは「にしむら先生」のドラマ解説YouTubeを参照)。
あと夫婦仲も自転車生活や中学受験にかなりの影響を及ぼす可能性があるが、これについては割愛する。「中学受験に起因する家庭崩壊」という記事を書かないよう心がけたい。
ワクチン接種後の激しい運動(ただしN=1)
ワクチン接種後に激しい運動をしたところ、プロ野球選手が死亡したという事例が出てきた。シンガポールではワクチン接種から1週間ほどは激しい運動をしないよう推奨されているらしい。特に無酸素運動はよろしくないとか。まず激しい運動とは何か、という疑問があるが、私はVo2max強度を超えるような運動と勝手に解釈している。
「緊急事態宣言のため外出は控えてください」の音声が公共のスピーカーから聞こえているが、モデルナ民の私は激しくない運動から様子を見ることにした。以下、記録である。
【ワクチン接種当日(1日目)】
朝、最大心拍の85%程度で1時間程走行。
大量の発汗、腰背部の痛み及び家族からの罵声
昼、モデルナ2回目接種
夜平熱、ロキソニン 夕食後1錠
【ワクチン接種後2日目】
倦怠感、微熱(max37.0℃)
ロキソニン 分3 毎食後
終日安静、『50を過ぎても早く!』を寝ながら読む。
【ワクチン接種後3日目】
倦怠感、筋肉痛(腰・背中・腕?)、発熱(max38.7℃)
ロキソニン 昼食後1錠
昼から夕方に発汗後、解熱
【ワクチン接種後4日目】
最大心拍の60%で2時間程度のサイクリング。腰が痛くなるのが早い。
雨のため涼しい。帰宅後に洗車。
【ワクチン接種後6日目】
サイクリング2時間、SSTで最大心拍の85%まで上がる。異常なし。
山岳ルートのため20分以上負荷をかける。
【ワクチン接種後8日目】
サイクリング2時間、Vo2maxパワーで最大心拍の90%になる。異常なし。
雨と風で砂が付着。再び洗車。
【ワクチン接種後10日目】
サイクリング2時間。2分もがきで最大心拍の95%に達する。異常なし。
暑いせいか出力が今ひとつ。
何か異変が起こったと書きたいところだが、特に何もなかったというのが実際のところである。強いて言えば、もともと炎症が起きていた部位に関しては、回復がやや遅れていたような気がする。なお、パワーに関しては涼しい日と暑い日に極端な差があったため、参考にしていない。
スポーツ愛好家に効くかもしれないフェイクニュース
あくまでもサンプル=1であり、私に異常がなかったから他の人も大丈夫とはとても言い切れない。もしかしたら時間差で何かが明らかになってくるのかもしれない。そこで反ワクチン派にもご納得頂けるようなフェイクニュースを考えてみる。以下は適当に考えたフェイクニュースである。もちろん因果関係がメチャクチャでエビデンスは皆無である(反ワクチン派の言説が100%間違っているとは言っていない)。
・スパイクタンパクが筋肉に入り込み、しばらくの間は運動機能が低下する。
・スパイクタンパクは無害だが1週間は体の中に潜んでおり、何をするかわからない。
・インフルエンザになるとVo2maxが下がるので、ワクチンを打っても同様の悪影響がある。
・アストラゼネカ製のワクチンは運動に関する遺伝子を書き換える可能性がある。
・ワクチン接種により磁石がくっつくだけでなく、反重力が発生するため登坂時に有利になる。
10年以上続けてしまった自転車
趣味は趣味なので10年続けようが20年続けようが、それは道楽でしかない。とはいえ、自転車に乗っていて気づきがないわけでもないので、まとめる。「気づき」というと自己啓発セミナーっぽくて嫌なのだが。全然関係ないが、いらすとやさんが不定期更新になるそうである。
1 トレーニングをする時間帯がだいたい同じ
平日と休日のライドで区分けされるかと思うが、平日はある一定の時間帯に乗ったりローラーをしたり、休日に少し長めに乗ったりという行動を繰り返している。そこに意味があるかどうかはもはやどうでも良い。練習やトレーニングの継続と報酬という回路が出来上がってしまっている。
Zwiftでもある一定の時間に乗っていると思われる見覚えのある外国人の名前がちらほら出現する。時間帯というのはコントロールしやすいようで実はしにくいものなのかもしれない。仕事や家庭の都合に応じて、ライドオンできる時間を逆算して考えるため、どうしても一定の時間帯にならざるを得ないのだ。
2 フィジカルが大して変わらない
上記と似ているが、一定の練習しかできない以上、得られる能力というものもそれなりであるということである。何をやっても能力的には頭打ちになってきているのが感じられるため、見切りを付けるのが早い人は他に楽しいことがあれば、自転車を降りているように見受けられる。
ただし、自分の体の特性というものがわかってきたり、技術的な伸び代があったりすると、若干ではあるが強くなっていることもある。年齢によっては加齢の影響に伴いこの伸びというのが相殺されて、結果的にプラマイゼロとなっているかもしれないが。
3 練習仲間がだいたい同じ
わざわざ休日に予定を合わせてローテーション練習をしようという人が果たして人口の何%いるのか。ということを考えたときに、その地域でそんなにいるわけがないというのはわかっているのだが、それにしても来るメンバーは大体同じである。
お住まいの地域が複数ある場合には複数のコミュニティに属している人はいるだろう。しかし、通常は定住しているエリアでの練習となるため、ご新規さんやゲストが入れ替わり立ち替わり現れるだけで、コアメンバーはそこまで変わりがない。最近はSNSの発達により以前と比較すれば流動的かも。
4 負荷が許容量をオーバーすると不具合が起きる
SDGsという言葉が最近聞かれるが、Sustenable Development Goals(持続可能な開発目標)というものらしい。自転車乗りとしては、FTPを上げようとか落車を減らそうみたいな話になる。
負荷というのは例えばTSSやCTL・ATL等で表されるものであるが、私の場合には精神的にバーンアウトするということはなく、身体的な不調が表れてくる。これが面白いことに毎年のようにその部位が異なるが、不調が表れはじめるストレススコアというものがやはりある。
不調というのは、膝、股関節、腰のどこかしらに鈍い違和感や下手すると痛みが感じられる。この辺は筋トレやフォームの見直しなどで若干不具合ポイントを遅らせることができるのだが、ある一定年齢を超えると、器そのものをレベルアップさせるのは難しいのかもしれない。
いい意味で捉えれば、持続可能なトレーニングの負荷というものが何となくわかってくる。これがサステナビリティってやつか。
5 苦手な練習をしなくなりウィークポイントが放置されっぱなし
これは単に意識の低さが問題であるのだが、実走の高強度インターバルであったり、O分全力走何本みたいなメニューを、それが必要な時期に何かと言い訳をつけてしないことがある。コンディション調整の際には取り入れるのだが、もう少し早いうちから取り組んでおけばなあと思うことが多々ある。
6 重要なレース前は酒が減る
そもそも飲酒しない人には関係ないが、酒には確実にコンディションを低める、または回復を遅らせる何かが入っている。それがどのような物質でどう作用しているのかはわからないが、練習の質や意欲が高まると自然に飲酒量が減ってくる。割とどうでもいいと思っているイベントの際には飲酒量に変化はないというのもポイントだ。ある程度飲む人は、定期的にレースに出たほうがむしろ健康を維持できるという可能性も否定はできない。
7 やっぱりお金はそこそこかかる
毎年いくらかかっているのかというロードバイク出納帳を付けているわけではないので、何にいくらかけているか把握できていない。しかし、ある一定以上の金額がかかっていることは間違いない。それがいくらになるかは個人差はあろう。
タイヤやチェーンその他の消耗品、補給食やドリンク代、レース参戦費用や交通費がかかる場合もあるだろう。金額には換算できない配偶者との取引コストというのも存在する。この辺は自転車という何の役にも立たない道楽を能天気に続けていられる環境に感謝を示さなければならない。サンキュー。
8 高速道路で怪しい挙動の車が何となくわかる
これは集団走行をしたりレースに出たりするようになってから顕著なのだが、前よりも明らかに要注意自動車の検知が早くなった。気のせいではない。そのような車を発見すると同時に、できるだけ近寄らないようにするなどの回避行動を考えることなくしていることがある。レースやイベントで変な動きの人のそばにいると最悪死んでしまうことから、何らかの神経回路が出来上がってしまったのだと推察する。
似たようなことで、巡航速度がちょうど良いトラックやバスの後ろにビタ付けしてしまうことがある。風向きによっては効果が絶大だ。徹底的にドラフティングすると燃費は結構違ってくるが、時々嫌がられることがあるので注意されたい。なお、すでに先客がいてトラック・バスとの車間が微妙に空いている時は、埋めたいと思ってしまう。流石に自重するが。そして自動発生的な高速道路トレインができると、謎の満足感を得られることがある。ただし、先頭交代はしない。
9 子供の身体的才能が自転車寄り
これは性差や個人差あるだろうが、子供の体型や能力がどう見てもラグビー選手や相撲取りあるいは競輪選手などのパワー系ではないことが明らかになってくる。カエルの子はカエルなのだ。
コロナ、サイクリング、eスポーツ
図 amazonの商品ページ
コロナウイルスの感染拡大により仕事や学業のみならず、自転車活動の変容も迫られているこのご時世である。今回はコロナ蔓延から自転車関連の展望を想像した。想像というよりも妄想に近いため、根拠はない。
ロックダウン下におけるサイクリング
都市封鎖が起こっても、外出を法的に罰することはできない(2020.3.27時点)。つまり、サイクリングは可能である。
朝のワイドショーで厚切りジェイソンが「アメリカ人は自分の身を守れるかどうかを気にするが、日本人は周りからどう思われるかを気にする傾向にある」旨の発言をしていた。そこで周囲を気にするという観点や走りの動機付けの観点などから、いくつか気になる点を挙げる。
①通常のサイクリングやトレーニング
サイクリング中に感染リスクが全くないとは言わないが、単独であればあまり他者と接触しない。海外では自転車通勤が推奨されるくらいなので、むしろ移動手段や体を動かす手段として望ましい可能性すらある。強いて言えば、コンビニ休憩中に感染リスクがある。基本は屋外でのサイクリング・練習になるため、普段通りに走るとしか言いようがない。
②グループライド
やや注意する必要がある。後でグループの1人が感染源になっていたことが判明した場合、公開されたSNSで練習相手を募っていたりすると、正義を振りかざした第三者から叩かれる可能性がある。
また、外出禁止の風潮が強くなった場合、お揃いのジャージで集団走をすると、非国民としてネットで叩かれる可能性も出てくる。閉じられたグループにおいても、都市部での自転車サークルは大きく集まるような動きを自粛し始めている。
③心肺機能の低下
コロナに感染すると肺の機能が一時的に落ちそうな気がする。どうも症状の個人差が激しいようなので「NHKスペシャル」などで科学的な見解をチェックしていくしかないだろう。
④モチベーションの維持
お金を払って多くの人がイベントに参加することが約束されている状況というのは、練習のやる気を高める上ではとても重要なことである。
JBCF主催の群馬や広島などはすでに中止の発表がなされている。参加者1万人規模のMt.富士ヒルクライムも現状では厳しいかもしれない。レースやイベントを設定することで練習のモチベーションを保つタイプの人は、なかなか難しい状態にある。
しかし、イベントがあってもなくても道路を使えるのであれば、大会実施の有無に関わらず記録を狙いに行く、という考え方もある。
すでに中止になったマラソン大会などで、個人でそのコースを走る人が散見されている。自分が出した記録に公式も非公式もないという発想であれば、それほどモチベーションを失わずにトレーニングを積むことも可能だろう。大会にお膳立てしてもらわなくても、走る人は走る。
コロナが自転車業界にとって追い風?
オーバーシュートしたらロードバイクが売れる。風が吹けば桶屋が儲かるみたいな理屈だが、実際に自転車通勤に切り替えている人が増えているという*1, *2。
コロナに感染したくない
→ 人が密集した空間を避ける
→ 電車に乗らない
→ 自動車か自転車通勤に切り替える
→ 都市部に車の駐車スペースはない
→ スポーツタイプの自転車が売れる
→ 自転車の競技人口が増える(?)
「自転車通勤で感染拡大を防ごう!」みたいなキャッチコピーがそのうち登場するかもしれないが、私は広告代理店の者ではない。
売れるのはクロスバイクかもしれないし、eバイクかもしれない。あるいはレンタサイクルのサービスが流行するかもしれない。利便性と健康意識と趣味感覚に訴求しうるのは、やはりロードバイクであろう。自転車に全く興味がない人から見ると、ただの自転車が50万円100万円もするということ自体ありえない。ということは、比較的低価格のカーボンロードの需要が増大すると考えられる。比較的低価格、といっても10万20万はするのだが。
都市部で自転車通勤が増えると、交通マナーの悪さが目立ったり事故のトラブルが増えたりするだろう。これらは課題として置いといて、増えた自転車人口をどう自転車競技の盛り上げと結び付けていくか。これは自転車競技に関わる団体の腕の見せ所である。
案としてはすでに出ているだろうが1つは仮想空間の利用である。ところで、株式会社ポケモンの企業理念に「ポケモンという存在を通して、現実世界と仮想世界の両方を豊かにすること」とある。
ポケモンにはポケモンという豊かな仮想世界があるが、自転車の仮想世界として代表的なものにZwiftがある。JBCFのレースは軒並み中止になりそうだが、Zwiftにお願いするか何かして、修善寺や群馬CSCのようなコースを作ってもらう。あるいはそのようなコースレイアウトを利用することも考えられる。
ちなみに、Zwiftとはインドアでのオンラインサイクリングやトレーニングを提供しているサービスである(月額2000円程度)。実施するには、スマートトレーナーまたはパワーメーターが装着された自転車(とローラー台)などが必要である。スマホアプリからイベントの確認等もできる(下図)。
図 スマホでのZwiftアプリの表示画面
「JBCF Zwiftクラシック」のようなテストイベントを行うなどして、プロやハイアマチュア向けにとりあえずレースをしてもらう。しばらくは400Wのえげつないスタートダッシュが見物だろう(結局は外国人勢が強いことがわかるだけかもしれないが)。選手ライセンスやアテンダントの掲示は全てweb上のやり取りで完結させる。youtubeで生放送をして、専門家がしっかり解説を行うことも重要だ。
ある種のeスポーツになるため、ローリング落車等は発生しないので安全性は極めて高い(ただし、実走で必要な技術は順位にあまり反映されないのが難点)。バーチャル空間を使用したレースは物珍しさからニュース等に取り上げられる可能性があるので、ちょっとした広告宣伝にもなり得る。
もう1つチャンスがあるとしたら、コロナ禍が一段落するとゲーム障害の問題が顕在化してくることにある。「ゲームばっかりしていないで外で遊びなさい」などの注意が全く通用しない子どもが増える(すでに久里浜医療センターはパンクしている)。任天堂が「みまもりswitch」のCMを保護者向けにバンバン流しているが、これは任天堂が「ゲーム障害の子どもがこれから増えることが予想されます」と暗に言っているようなものである。
ゲーム依存にはゲームで解決するというのも1つの考え方である。インドアでも十分運動になるのはトレッドミル、ローラー台、筋トレ、ビリーズブートキャンプのどれかである。この中で最もeスポーツとの親和性が高いのはどれだろう。
eスポーツと自転車を組み合わせたzwiftは、現時点ではおじさん(またはお姉さん)の遊びみたいになっているところがあるが、これを子どもの遊びとして利用しやすい環境を整える。廉価版のスマートローラーや自転車が必要なのがネックではある。
なお、自転車とは全く関係ないが、ある仮想現実における架空のキャラクターを愚息が発案した(下図)。
図 たねOOOン(「いらすとや」より筆者作成)
サイクリストの欲求ピラミッド
図 マズローの欲求ピラミッド
マズローの欲求階層説にみるサイクリストの欲求
マズローの欲求階層説(上図)とは低次の欲求を満たすと高次の欲求が表れてくるという説である。
自転車という趣味って、マズローの5段階の欲求の、上の3つに対応している気がするんですよ。しかも、上位に行くほど自転車との相性が良くなる。たとえば、社会欲求や承認欲求は、クラブやチームに所属したりレースで結果を出したりすれば満たされますよね。
一番重要なのが、最上段の欲求である「自己実現の欲求」です。自転車は、これとの相性がばっちりなのです。トレーニングをし、レースに出る。あるいは、苦しい思いをしながらヒルクライムや長距離サイクリングに挑戦する。こういう行動のモチベーションは、「なりたい自分になる」という、自己実現の欲求の表れに他なりません。
出所:栗村修の”輪”生相談<130> 25歳男性「自転車って何が楽しいんでしょうか」
①非日常的な興奮や高揚感を味わい、現実の厭なことから逃避する。
②仲間たちと気軽な会話を楽しみ、つながりを感じ、仲間から認められる。
③技術やレベルを上げたり、戦果を挙げたりすることで、達成感や自己効力感を味わう。
出所:岡田尊司(2014)『インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで』
栗村(2018)が指摘するように自転車は高次の欲求と相性が良いが、一方で、サイクリング中には低次の欲求の欠落がしばしば起こる。岡田(2014)の指摘はオンラインゲームに関する記述だが、自転車にも大いに当てはまるところがあるのではないだろうか。
大まかなところではこれ以上の説明は必要ないかもしれないが、1つ1つの欲求階層を確認していく。
◆生理的欲求
バイタル、食事、水分(体内の恒常性)、排泄、睡眠、疼痛がないこと
低血糖や脱水は補給がおろそかになったり、レースやイベントの強度が高いと発生頻度が上がる。
極端な例では、ツールドおきなわで全身が吊る、ハンガーノックになるなどの症状が表れ、一時的に生理的な欲求の欠乏が起こる。長時間のレースでは排泄欲求との戦いもあり、トイレタイムがレースに影響を及ぼすこともあり得る。プロレベルだとテレビには映らない排泄テクニックが重要であるとも言われている。また排泄は軽量化を意味するため、承認欲求や自己実現欲求とも関連している。
ロングライドでは、臀部、ハムストリング、膝や首の痛みが発生しやすい。超長距離になると、アキレス腱や手首などの部位に疼痛を感じることもある。600ブルベでは睡眠が必要になり、300km先にビジネスホテルをドロップバッグとともに用意する参加者もいる。パリブレストパリ完走者曰く、600よりも400の方が辛いとのことである。
軽量でエアロなフレーム、ディスクブレーキ、チューブレス対応のホイールなどの機材の進化は、より速く快適に走れることを手助けする。目的に応じて良い機材を選べば、走行中の疼痛や苦痛を緩和することにもつながる。
この欲求階層は、通常生活では当たり前のように満たされていても、過酷な環境では結構な頻度で欠落することがある。
生理的な恒常性が失われるのなら、そもそもやらなければいいのに、という意見はまともなので傾聴に値しない。
【生理的欲求にかかわるアイテム】
・心拍計
・補給食、ドリンク
・塩分、ミネラル、芍薬甘草湯
・サイクルウェア、シャモアクリーム
・アンダーウェア、気候に対応した小物
・用途にあったフレーム、ホイール、サドルなど
◆安全の欲求
良い自転車、良い装備、良い道路・ルート、最低限の技術、周囲の交通状況との調和
性能のよい自転車は低い出力でも比較的速度が出るため、安全ではないところもある。安物を買って走行中にハンドルが取れる、フォークが折れるなどの事故は可能な限り避けたい。それなりの金額をバイクに費やすことは合理的な選択である。
初めてのロードで、思ったよりも姿勢の維持が大変で、横を走る車との距離感が近いという印象を持ったかもしれない。いざ乗ってはみたものの、安全性が余りにも満たされていないと感じたサイクリストはそこでバイクを降りる。
そうでないサイクリストは継続してバイクに乗り、そのうち自分なりに安全だと思うルートや峠を探索していく。
ブルベではスタッフが試走をした上で、可能な限り安全なルートを提供してくれる(主催団体にもよる)。ただし、夜間の下りで低体温症になる場合があり、ちょっとした装備の選択ミスが生死を分けることもある。
イベントになれば位置取りを上手く行い、落車のリスクを減らす必要がある。レースではローリング中に落車が起こることもしばしばあり、スタート前にどこにバイクを置くかというのも重要になってくる。
またレース前にあご紐を注意される者は少なくない。ヘルメットが何の意味もなさないであろう被り方をしている人は、その時点でリスク管理能力が怪しい。
安全の欲求は、個人の感じ方が大きいところでもあるが、一方で道具や心がけでどうにかなる部分もある。ただし、備えあれば憂いなし、とは言い切れないところもあるから難しい。
【安全の欲求に関わるアイテム】
・良いバイク
・手袋、ヘルメット、アイウェア
・前照灯、尾灯、ミラー
・地図が表示できるサイコン
・フラットペダル
◆所属と愛の欲求
チームへの所属、練習仲間、ショップの常連
サイクリングにおいて誰にでも出現する欲求階層ではない。サイクリングは1人でも完結するスポーツであり、むしろ周囲との協調を好まない者も一定割合で存在する。
一方で、集団でエンジョイしたい層や、自転車競技にハマる層にとっては重要な欲求階層である。
走っていて脚力が付いてくると、イベントやコミュニティの方から自分に近づいてくることがある。ものは試しで走ってみると、集団走行やレースに適応してしまうことがある。そうすると自動的に集団への帰属欲求が起こる。この順番は人によっては全く逆だろう。
協調することへの適性が低い場合、仲間内で何らかのトラブルを起こし、いつの間にか集団からいなくなっている。あるいは居心地のいい集団を求めてさまよう場合もある。自分がグループリーダーとして集団を牽引することもある。
努力家で速いのに、周囲との連携がいまいちでグループから消えていくというのは何となく悲しいものがある。それは極めて自転車的なことである、と言えばそうかもしれないが。
【所属と愛の欲求に関わるアイテム】
・整備されたバイク
・チームジャージ
・ライセンス
◆承認欲求
他人からの承認と自分自身による承認(自尊感情)という2種類がある。
栗村(2018)や岡田(2014)が指摘するように、仲間内での評価やレースでの良い成績は他者からの承認を得られやすい要素である。そして仲間との他愛ない会話によっても刺激されるものでもある。
「○○でのアタックは凄かったですねぇ〜」
「□□さんの後ろに付くだけで大変ですよ〜」
「△△峠が31分ですか? それは速いですね〜!」
商売上手なお店は、個々の欲求や特徴を把握しており、それぞれに合わせた対応をしている。そのようなお店(≒店主)はこの欲求階層の重要性をよく理解している。
自尊感情は人によって様々で、近所をポダリングしていてもそれが満たされる場合から、様々なレースを通して満足させるケースまであるだろう。
距離信仰がある場合には、100km走った、200km走った、550kmを24時間で走ったなどの目安がある。SNSに書き込むことによって、同時に他者からの承認欲求も満たせる可能性がより高くなる。
ログをstravaに残し、KOMに君臨するというのも承認欲求に関連する。また現時点では開催が不明瞭なMt. 富士ヒルクライムの「ゴールドリング」「シルバーリング」「ブロンズリング」も大いに承認欲求を満たすと思われる。記録を残した者にとっては、原価が数百円のちゃちな指輪ではないのだ。
一言で言えば、体力や機材で速度が向上すると承認欲求は満たされやすくなる。
【承認欲求に関わるアイテム】
・スマホ
・ローラー台
・パワーメーター
・GPS付きのサイコン
・レースやイベントの賞品
◆自己実現の欲求
自分がなりたい何かになる、という欲求階層である。
ポダリングによる自己実現というのはあまりピンとこない。地域のスイーツ制覇という自己実現はあるかもしれないが。
過酷なイベントを達成することや難しいレースで良い成績を残す(または完走する)こととの関連性が強いだろう。自転車的には、トレーニングを継続している自分、目標のレースで望ましい走りをしている自分を追い求める欲求であろうか。
ある程度行きつくところまで行ったら、後進の育成やチームのサポート・運営、またはイベントの開催という形での自己実現もあるだろう。
いわゆるガチ勢と言われる人々は、大なり小なり自己実現を目指しているものだと思われる。レースで成績を出したい場合には、自転車に適応できる遺伝子や環境が必要ではある。しかし、どのような体力・技術レベルであっても、自分自身の限界にそれとなく挑んでいるという点には変わりはない。
これでサイクリストの欲求はだいたい網羅したと思うが、高級バイクを持つという所有欲もこの階層に含まれるのかもしれない。
【自己実現の欲求に関わるアイテム】
・速く快適に自転車を走らせる全てのアイテム?
・所有欲を満たし、速く走らせることができる自転車?
◆まとめ
このようなサイクリストの欲求を満たすものをマズローの欲求ピラミッドに当てはめると、以下の図のようになる。
図 サイクリストの欲求ピラミッド(筆者作成)
【結論】自転車は機材スポーツだった!