つよポタミア

自転車関係などの雑記帳です。

【就活に役立つ】ミッドサマー【ネタバレ感想・考察】

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 就活といえば『ミッドサマー』、『ミッドサマー』といえば就活である。就職活動らしきものはほとんど映画に出てこないが、就活生必見の映画である。

 

★☆★ネタバレしていますので映画を見た人のみが閲覧するとよいです★☆★

 

 『ミッドサマー』とは、メンヘラ気味の女子大生であるダニーがなんだかんだで救われるというお話の映画である。これから就活をする人は、就活をするのに重い腰が上がらない、就活できなかったらどうしよう、もう友人らは内定を持っている、面接にすらなかなか呼ばれない、内定がないので死にたくなってきた、などとさまざまな感情が押し寄せるかもしれない。

 

 しかし、ミッドサマーはそんなあなたを救うかもしれない映画なのだ。

 

 女子大生のダニーは身内に不幸があり、彼氏のクリスチャンにおんぶに抱っこのメンヘラとして描かれる。ダニーは何となく邪険にされていることを察知しつつも、彼氏グループに交じってスウェーデンのある村で90年に1度しか行われない夏至祭に参加することになる。

 

 何かきっかけがあれば、まずは動いてみる。就活ではまず行動することが重要だ。

 

 さて、ご一行はスウェーデンに到着し、村の手前の草原で一服する。最初はトリップすることに拒否感があるダニーだったが、周りに合わせてキメてみる。始めは素晴らしい体験であった。

 

 就活の説明会などで(現時点ではまず開催されていないだろうが)、御社のお話に興味がとてもあるフリをし、積極的に質問をする他の就活生に違和感を覚えるかもしれない。しかし、何も考えずに周りに合わせてしまえば、その場の雰囲気になじみ、就活トリップに耽ることができるだろう。

 

 ホルガ村に辿り着いたご一行は牧歌的な雰囲気の中でもてなしを受ける。ダニーのお仲間が「ここはカルトか?」と率直な感想を漏らしていたが、このような核心を突くツッコミは時として失礼に当たる。

 

 たとえば企業の見学をした際に、「何となく社員の表情が暗い」「出てくる社員がいい人すぎて何か怖い」「何かみんな同じような格好をしている(これは就活生にこそ当てはまるけど)」などと案内してくれた社員に向かって率直な発言をしてしまうかもしれない。一見どうでもいいようなことでも、企業のダークサイドに触れてしまっている場合は後々目をつけられて、そこの企業の一員にはなれない可能性がある。社畜としての適性を見られているのだから、微かに滲み出る醜悪さには目をつむり、就活生らしい振る舞いをした方がベターである。

 

 盛大に始まった奇祭を見学するダニーご一行であるが、ここで「アッテストゥパン」を目にすることになる。お仲間の数名は取り乱しているが、ダニーはしっかりと儀式を見届ける。トラウマがあったとしてもしっかりと状況を観察することは重要であろう。

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アッテストゥパンの図(「いらすとや」より筆者作成)

 

 「アッテストゥパン」を企業のイベントで喩えるのは無理があるが、強いて言えば定年やリストラにあたるだろうか。定年式やリストラ式というのは聞いたことがないが、企業からつまみ出される人をあえて祝福するという文化も探せばあるかもしれない。葬式は悲しみではなく喜びなのだと。なお、我が国では鉄道網が発達していることから、ムービングアッテストゥパンで強制終了するという手法が定着している。電車に乗っている人は「あ~」と心の中で思う。

 

 この辺からご一行のふるい落としが激しくなってくる。ある仲間は、倒木に小便を引っかけたことで、ホルガ村の住人から顰蹙を買ってしまう。「これはただの木だろ」と主張するが、この村ではタブーなのだ。

 

 クリスティーン・ボラスは「(企業にとって)何よりも問題なのは、礼節に欠ける人間をうっかり入れてしまうことだ」と述べている。礼節というのはもちろん重要だが、残業時間を細かく聞いたり、年次有給休暇の実質的な取得日数を聞き出そうとしたりすると、日本では怒り出す面接官がいる。リアル労働条件を掘り下げると、やる気がないと認知されるらしい。面接のマナーとしてダメなものはダメというルールを知っているかことが重要で、その理由はもはやどうでもいいし、なぜダメなのかは面接官もよくわかっていないのかもしれない。

 

 物語は佳境に入っていく。主人公のダニーは村のダンス大会に出て、神秘体験をしつつ優勝する。どうも宗教にとっては神秘体験が重要らしい。村の一員としてほぼ内々定していると思われるダニーであるが、このようなコンテストで勝つということが大きな意味を持つこともある。美しい風景の中でクイーンダニーの花冠の花がうようよ黒く開いている描写は印象に残っている。

 

 全体的に花は印象的だったが、やはりこのシーンは外せないだろう。

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花の図(フランシス・ベーコンの絵画と「いらすとや」より筆者作成)

 

 これは企業に入ってからの話になるが、企業内で競争をし、あなたの成果が一番であることを明確にする。訳のわからない評価尺度であっても、とにかく良い成績を残す。そうするとそれをお仲間達が祝福してくれる。尺度としてよくわからないけど、とにかく喜ばしいと思わせる。皆から称えられ承認欲求は著しく満たされる。定期的な企業内のイベントなどで徹底的に表彰されるというのは、労働者を効率的に働かせる上で割と効果的なのかもしれない(研究でどうなっているのかは知らないが)。

 

 「式」というものに違和感を感じるか感じないか。感じていたらそのサインを無視し、あるシステムに適合するように努めると良いだろう。

 

 彼氏のクリスチャンはすでにはしごを外されているのか、村人達の連携プレイにより村娘の生殖に付き合うハメになる。生殖に至るというのが大事で、とにかく外の種が得られればいいというのがポイント。採精したらそれを漏らさないようにする描写が何とも丁寧で、それがただ生殖のための行為であったことが強調される。

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生殖の図(「いらすとや」より筆者作成)

 

 もし彼氏が聖人君子で佐藤健みたいなイケメンだったら村に迎え入れられていたのかというのは、気になる所ではある。佐藤健が熊の着ぐるみの中で焼死するというのは、日本人女性のためにあってはならないことであるが。

 

 もう1つ気になる点として、村の幹部達が意思決定をしている様子はほとんど出てこない所である(アウトレイジのような映画ではないので)。しかし、夏至祭をスムーズに進行するためには、今年は生け贄を何人にするか、誰をどのようなタイミングで生け贄にするかということを決め、その情報を村人で共有していく必要がある。油断すると貴重な村人が殺られてしまう可能性もあるのだから。幹部らは迅速に合意形成していく必要があるのではないかと推察される。小規模なコミューンだから意思決定は統一されやすいかもしれない。あれが200人300人となると、システムを維持するのも大変そうだ。

 

 もはや就活には関係なくなってしまったが、結果として、見事にシステムの一員となったダニーはとても幸せそうに見える。どんな職場であろうと本人が満足しているのであれば、それは幸せなことなのだ。

 

 もしかするとダニーは1ヶ月後に「やっぱり何か違うぞ!?」と思い始めるかもしれない。よく訳もわからないまま歩く花瓶にさせられた自分を思い出したときに、ダニーは何も感じないことができるだろうか?