パワーキャルと心拍数ドリフト
パワーキャルを使用して1ヶ月経ったが、心拍数ドリフトの影響が気になってきた。
心拍数ドリフトについては、筑波大の鍋倉教授が「第121回 知っておきたい心拍数のドリフト現象」でわかりやすい解説をしている。
表1は3km程度の坂を5本登った時のデータである。
表1 坂5本
回数 | タイム | パワー | 心拍数 |
1 | 10:04 | 211 | 150 |
2 | 10:07 | 217 | 154 |
3 | 10:04 | 217 | 154 |
4 | 10:05 | 220 | 155 |
5 | 10:06 | 221 | 156 |
出所:筆者作成
パワーというのはパワーキャルが吐き出すパワーである。5本連続して登り、5本ともほぼ同じ条件で同程度のタイムである。 にもかかわらず、1本目と5本目ではワット数が約5%増加している。
表2は坂を10本登った時のデータである。
表2 坂10本
回数 | タイム | パワー | 心拍数 |
1 | 11:24 | 195 | 145 |
2 | 10:59 | 208 | 151 |
3 | 10:41 | 215 | 154 |
4 | 10:47 | 216 | 154 |
5 | 10:52 | 220 | 156 |
6 | 11:06 | 218 | 157 |
7 | 10:54 | 221 | 157 |
8 | 09:14 | 263 | 172 |
9 | 11:29 | 224 | 159 |
10 | 10:35 | 238 | 163 |
出所:筆者作成
6本目の後の休憩15分以外は、連続して行われた登坂である。8本目は後ろから10人位の集団に追走されたので頑張ってしまった。おかげで9本目と10本目のデータが興味深いものとなった。タイムがまちまちであるが、ここでも心拍数ドリフトと思われる現象がみられる。
1本目と9本目(黄色の行)を比較すると、おおむね同タイムであるにもかかわらずパワーが約15%も増加している。同じくタイム差がほぼない3本目と10本目(赤色の行)をみても、パワーが約10%増加している。脚が削られてくると心拍数ドリフトが顕著になってくる。
心拍基準のパワーキャルでは、高強度インターバルを行うと、回数を重ねるにしたがってパワーが水増しされると言える。ではどのような不具合が起こるかというと、インターバルを止める基準が不明瞭になる。
パワトレ本には、あるインターバルの長さで何%パワーが減少すると、それ以上練習しても効果が薄くなるといった具体的な記述がある。パワーキャルだとこのパワー減少幅の測定が極めて難しい。
もう1つの不具合は、特異的な状況におけるパワーを測定できないことである。例えば、富士山ヒルクライムの3本目では、体感90Wの出力でもパワーキャルでは180Wと表示される可能性がある。個人的には脚が売り切れた後のデータが、割と重要なのではと思っている。これに関連して、パワーキャルではエアロビック・デカップリング(有酸素持久力乖離幅)が測定できない。
予想はしていたが、より精度の高いパワーメーターを求める気持ちが沸々と沸いてきた。ただ、パワーキャルの使用によりトレーニング量や知識が飛躍的に増加したので、全くのムダではなかったと思うことにする。パワーキャルの心拍ベルトはずり落ちなくて使いやすいのも副産物か。
そしてとうとうパワーメーターを導入することになる。