【就活に役立つ】ミッドサマー【ネタバレ感想・考察】
就活といえば『ミッドサマー』、『ミッドサマー』といえば就活である。就職活動らしきものはほとんど映画に出てこないが、就活生必見の映画である。
★☆★ネタバレしていますので映画を見た人のみが閲覧するとよいです★☆★
『ミッドサマー』とは、メンヘラ気味の女子大生であるダニーがなんだかんだで救われるというお話の映画である。これから就活をする人は、就活をするのに重い腰が上がらない、就活できなかったらどうしよう、もう友人らは内定を持っている、面接にすらなかなか呼ばれない、内定がないので死にたくなってきた、などとさまざまな感情が押し寄せるかもしれない。
しかし、ミッドサマーはそんなあなたを救うかもしれない映画なのだ。
女子大生のダニーは身内に不幸があり、彼氏のクリスチャンにおんぶに抱っこのメンヘラとして描かれる。ダニーは何となく邪険にされていることを察知しつつも、彼氏グループに交じってスウェーデンのある村で90年に1度しか行われない夏至祭に参加することになる。
何かきっかけがあれば、まずは動いてみる。就活ではまず行動することが重要だ。
さて、ご一行はスウェーデンに到着し、村の手前の草原で一服する。最初はトリップすることに拒否感があるダニーだったが、周りに合わせてキメてみる。始めは素晴らしい体験であった。
就活の説明会などで(現時点ではまず開催されていないだろうが)、御社のお話に興味がとてもあるフリをし、積極的に質問をする他の就活生に違和感を覚えるかもしれない。しかし、何も考えずに周りに合わせてしまえば、その場の雰囲気になじみ、就活トリップに耽ることができるだろう。
ホルガ村に辿り着いたご一行は牧歌的な雰囲気の中でもてなしを受ける。ダニーのお仲間が「ここはカルトか?」と率直な感想を漏らしていたが、このような核心を突くツッコミは時として失礼に当たる。
たとえば企業の見学をした際に、「何となく社員の表情が暗い」「出てくる社員がいい人すぎて何か怖い」「何かみんな同じような格好をしている(これは就活生にこそ当てはまるけど)」などと案内してくれた社員に向かって率直な発言をしてしまうかもしれない。一見どうでもいいようなことでも、企業のダークサイドに触れてしまっている場合は後々目をつけられて、そこの企業の一員にはなれない可能性がある。社畜としての適性を見られているのだから、微かに滲み出る醜悪さには目をつむり、就活生らしい振る舞いをした方がベターである。
盛大に始まった奇祭を見学するダニーご一行であるが、ここで「アッテストゥパン」を目にすることになる。お仲間の数名は取り乱しているが、ダニーはしっかりと儀式を見届ける。トラウマがあったとしてもしっかりと状況を観察することは重要であろう。
アッテストゥパンの図(「いらすとや」より筆者作成)
「アッテストゥパン」を企業のイベントで喩えるのは無理があるが、強いて言えば定年やリストラにあたるだろうか。定年式やリストラ式というのは聞いたことがないが、企業からつまみ出される人をあえて祝福するという文化も探せばあるかもしれない。葬式は悲しみではなく喜びなのだと。なお、我が国では鉄道網が発達していることから、ムービングアッテストゥパンで強制終了するという手法が定着している。電車に乗っている人は「あ~」と心の中で思う。
この辺からご一行のふるい落としが激しくなってくる。ある仲間は、倒木に小便を引っかけたことで、ホルガ村の住人から顰蹙を買ってしまう。「これはただの木だろ」と主張するが、この村ではタブーなのだ。
クリスティーン・ボラスは「(企業にとって)何よりも問題なのは、礼節に欠ける人間をうっかり入れてしまうことだ」と述べている。礼節というのはもちろん重要だが、残業時間を細かく聞いたり、年次有給休暇の実質的な取得日数を聞き出そうとしたりすると、日本では怒り出す面接官がいる。リアル労働条件を掘り下げると、やる気がないと認知されるらしい。面接のマナーとしてダメなものはダメというルールを知っているかことが重要で、その理由はもはやどうでもいいし、なぜダメなのかは面接官もよくわかっていないのかもしれない。
物語は佳境に入っていく。主人公のダニーは村のダンス大会に出て、神秘体験をしつつ優勝する。どうも宗教にとっては神秘体験が重要らしい。村の一員としてほぼ内々定していると思われるダニーであるが、このようなコンテストで勝つということが大きな意味を持つこともある。美しい風景の中でクイーンダニーの花冠の花がうようよ黒く開いている描写は印象に残っている。
全体的に花は印象的だったが、やはりこのシーンは外せないだろう。
花の図(フランシス・ベーコンの絵画と「いらすとや」より筆者作成)
これは企業に入ってからの話になるが、企業内で競争をし、あなたの成果が一番であることを明確にする。訳のわからない評価尺度であっても、とにかく良い成績を残す。そうするとそれをお仲間達が祝福してくれる。尺度としてよくわからないけど、とにかく喜ばしいと思わせる。皆から称えられ承認欲求は著しく満たされる。定期的な企業内のイベントなどで徹底的に表彰されるというのは、労働者を効率的に働かせる上で割と効果的なのかもしれない(研究でどうなっているのかは知らないが)。
「式」というものに違和感を感じるか感じないか。感じていたらそのサインを無視し、あるシステムに適合するように努めると良いだろう。
彼氏のクリスチャンはすでにはしごを外されているのか、村人達の連携プレイにより村娘の生殖に付き合うハメになる。生殖に至るというのが大事で、とにかく外の種が得られればいいというのがポイント。採精したらそれを漏らさないようにする描写が何とも丁寧で、それがただ生殖のための行為であったことが強調される。
生殖の図(「いらすとや」より筆者作成)
もし彼氏が聖人君子で佐藤健みたいなイケメンだったら村に迎え入れられていたのかというのは、気になる所ではある。佐藤健が熊の着ぐるみの中で焼死するというのは、日本人女性のためにあってはならないことであるが。
もう1つ気になる点として、村の幹部達が意思決定をしている様子はほとんど出てこない所である(アウトレイジのような映画ではないので)。しかし、夏至祭をスムーズに進行するためには、今年は生け贄を何人にするか、誰をどのようなタイミングで生け贄にするかということを決め、その情報を村人で共有していく必要がある。油断すると貴重な村人が殺られてしまう可能性もあるのだから。幹部らは迅速に合意形成していく必要があるのではないかと推察される。小規模なコミューンだから意思決定は統一されやすいかもしれない。あれが200人300人となると、システムを維持するのも大変そうだ。
もはや就活には関係なくなってしまったが、結果として、見事にシステムの一員となったダニーはとても幸せそうに見える。どんな職場であろうと本人が満足しているのであれば、それは幸せなことなのだ。
もしかするとダニーは1ヶ月後に「やっぱり何か違うぞ!?」と思い始めるかもしれない。よく訳もわからないまま歩く花瓶にさせられた自分を思い出したときに、ダニーは何も感じないことができるだろうか?
修善寺にマンセボ
にわかサイクルロードレースファンからみた「JBCF第2回修善寺ロードレース」の感想である。以下、選手らの敬称は省略する。
タイムアウトの基準
「下田にペリー」みたいなタイトルだが、自転車界にとってはちょっとしたインパクトがあったように思う。修善寺のDay2でJプロツアーの選手が105名中99名がタイムアウトという異例の事態が生じた。
まずはツール総合4位の実績を持つマンセボを含む逃げ集団が想像以上に速かった、というのはあるだろう。そして安全管理の都合上、タイムアウトを4分半から5分と最初から決められていたのが、プロの大半がリタイヤになった理由の1つである。だが、この設定の仕方は半分間違っている。なぜなら、プロとアマでは集団の構成のされ方が違うからである。
図1.アマチュア(特にE2、E3)の集団
図2.Jプロツアーの集団
アマチュアとプロが同一の日に同一の場所でレースを行うため、競技規則は原則的にアマでもプロでも統一されているようである。
アマチュアに関しては4分半でタイムアウトを宣告するのは正しい。アマでありがちな構図(図1)では、集団から千切れることは基本的に走力の不足を意味する。したがって、千切れたら先頭との差は開くばかりである。先頭集団が1周8分半で回るのに対して、脚を使い果たした千切れ組は10分以上はかかるため、最大でも先頭から5分でレースから下ろすのは、安全面から言って妥当である。なお、最終周回に入るタイミングにおいて7〜8分遅れで通すのは、安全上問題ない。
一方のプロ集団は、少数の逃げを容認した後は集団が落ち着くという展開になることがよくある(図2)。アマは先頭とのタイム差をコントロールする術はないが、プロのメイン集団にはそれがある。集団がその気になれば、5分差からでもある程度までは詰められる。ドラフティング効果がそれほどではない修善寺だとしてもだ。
そもそもの間違いは、プロとアマで同一のタイムアウト基準を適用したことにあると考えられる。ただし、マンセボインパクトを狙って大量のリタイヤをあえて出したという見方もできなくはない。
マンセボ劇場
今年からレースが映像でも観られるようになった。ライブリザルトの配信も面白い。
Day2のレース概要 時間は動画内の時間
1:27 湊の単独逃げ
「サンキュー湊」
1:35 マンセボ動く
2:27 中田動く、マンセボ静観
「ナカータに触れたとたん動きました」
2:35 マンセボ動く、10名程度の集団崩壊
2:49 メイン集団タイムアウト、コース上は10名以下
3:16 マンセボアタック、吉岡つけず
「マンセボ選手はインナーに入れてるんですかね? このコースで」
3:20 アイランが単独でマンセボに合流
4:04 マンセボ速やかにクールダウン
映像で断続的にしか観ていなかった部分はあるが、解説の廣瀬GMの「レースをご覧の方は、誰が一番強いのかよくわかったと思います」の言葉通りのマンセボ劇場であった。
圧巻は19周目(動画3:16ごろ)である。解説は「マンセボが吉岡やアイランのペースを合わせているだけで、いつでもいける」と事前に指摘しており、後はタイミングの問題であったことがうかがえる。
図3.修善寺のコースプロファイル
出所:JBCF「テクニカルガイド」(①〜④は筆者加筆)
マンセボがアタックしたポイントは、2号橋からピークに差し掛かる少し手前である(図3①)。少しの平坦から登りの角度がきつくなるこのポイントは、走ってて最も辛く感じる箇所の1つである。映像からではわからない息づかいやペダリングの様子などから判断したのだろう。アイランの後ろに下がってから勢いをつけてのアタック(図4)に、吉岡はなす術がなかったという印象である。
図4.マンセボアタック
ピークのヘアピンから下りに入る局面で、バイクがマンセボを追いかけ始めるが、その姿がなかなか見えない。つまり、マンセボはアタックから下り始めまでかなり踏んでいたことになる。30秒500Wは軽く出ていたのではないだろうか。
これはプロ集団全体に言えることだが、ピークから下り始めるまでの踏み方が凄い(図3②)。下位のアマや脚のなくなったプロはこの辺でゆるゆると踏むことしかできないが、強い選手はインコースの植木に接触するのではないかという勢いで回していく。
ホームストレート手前の傾斜がきつくなるあたりで、カメラが追いつく(図3③)。ここであることに気付いた廣瀬GMがマンセボアウター疑惑を口にする。このコースでアウターのみは考えられないのだが・・・。
アイランが仕掛けた詳細な地点が不明だが、ホームストレートに入った時点でアイランは吉岡を突き放していた。ホームストレートからの登りで後ろを確認したマンセボは、アイランが単独で来ていることを確認し、脚を緩めている(図3④)。そして登りのピークでマンセボはアイランと合流する。解説からは「勝負あった」のコメント。修善寺の地形はこうやって使うのかと感心した。廣瀬GMらの解説もわかりやすく、レースの面白さを的確に伝えていたように思う。
仮にアイランにそれほど余力がなかったとしても、マンセボはそのまま先行し勝ちを確定させ、アイランは吉岡の後ろで回復してから、どこかで突き放してワンツーを決めるという選択肢も考えられた。詰めロード的にこれは次善の手であろうか。
2021年からJBCFの裾野を広げ、一般的なサイクリストも参加できるような新リーグの構想もあるということで、非常に興味深い。上から下まで幅広くランク分けをしているドイツサッカーリーグのような感じだろうか。
一方で、Jプロツアー選手の賃金が全体的に低いと言われているのは気がかりである。具体的には、例えば3部以上のプロと言える選手に対する最低賃金はいくらにするのか、といったことである。資金源を確保するためにレプリカジャージを現地で販売するなどの泥臭いことが必要かもしれない(もちろんこれにはリスクが伴う)。
蛇足だが、現状ではE1のメイン集団(あるいはE2、E3)とJプロツアーのメイン集団の平均年収を比較した場合、おそらく学生を含めてもE1メイン集団の方が明らかに高いだろう。
みんなでもがくガールズバー【サイクルホリック】
FTP測定の際、若く容姿に優れた女性に「センパイ頑張って〜」と言われたいがために訪問。その目的は達成された。ただし、応援されてもFTP測定が苦しいことには変わりない。
夕方お店に入るとすでに何人かのお客さんがおりローラーを回していた。私服で回していたので、逆によくやっているなと思った。
私はシューズとジャージを持参した。サドル高を伝えたらすぐにセッティングされたので大丈夫だろうと思ったが、一応サドル高を測る。ピッタリだった。ボトルの水を移し替えたり、タオルをセッティングしたりしていたら、店員さんから「乗り慣れていますよね?(そういう人向けではないんだけれど・・・)でもいいと思います!」と指摘されてしまった。
負荷が緩いときに普段の乗り方などを店員さんと情報交換する。するとリアの変速がおかしいことに店員さんも私も気付く。ローの時にチェーンがどっちに行こうか迷っている挙動をしていたので、アジャスターを適当に回す。私以前に乗った人は気付かなかったのだろうか。
こういうこともあるだろうと思い、インナーローで回していると、今度は急に負荷がかかる。ここは馬返し〜狩休なのかなというくらいの負荷で、画面を見ると傾斜は20%ではない。スマートローラーは初めてなので、この辺の原因は不明である。またTacx NEOの仕様なのか若干バイクが左右に振れるため、上体を安定させるように努める。
FTP測定の際にはどうも負荷が一定になるようで、変速せずに淡々と回す。測定中は店員さんはたまに様子を見にくるぐらいで、余計な口出しはしない。最後の方は垂れてきたこともあり、追い込み時にハッパをかけられる。スタッフの何名かはすでにFTP測定をしているらしいので、この辺の声掛けは心得ているようだ。
シャワー室で汗を流した後に、プロテイン飲み放題を頼む。FTP測定の後なのか頭がぼーっとしており、店員さんの説明を2回ほど聞いて理解する。バーは満席で、お客さん同士あるいは店員さんとのトークで盛り上がっている。
周りのお客さんや店員さんと話しながら、プロテインとBCAAを堪能する。青りんご味(おそらくXtendのGreen Apple)の作り方が非常に参考になった。店員さんの何人かは明らかに経験値が高く、作業の迅速さやコミュ力、観察力が普通ではない印象を受けた。こういうバーに詳しそうなお客さん曰く、サイクルホリックはかなり攻めているとのこと。何となく店全体に一山当ててやろうみたいな雰囲気があって良い。
トレーニングジムとガールズバーの融合を思いついたとしても、実行に移すのは容易なことではないので、これは凄いことだと思う。流行り廃りが激しい業種のようだが、将来有名になるような選手が「きっかけはガールズバーでした」なんてことがあればなお面白い。
ところで、バーのテレビ画面にはリッチー・ポート選手が落車でリタイアしたステージが映し出されていた。落車については個人的にもかなり検討課題である。
JBCFレースにおける最近の落車多発原因について考察 #2
アナバイト事件に思う未来のドーピング
出所:「仲裁判断JSAA-DP-2016-001号事案」
http://www.jsaa.jp/award/JSAA-DP-2016-001+a.pdf
トラック競技の自転車選手がドーピング陽性となったが、意図的なドーピングではないとの判断により、4年の資格停止処分が4ヶ月に短縮された。
上の「仲裁判断」では、ギャスパリ社のアナバイトというサプリメントに、アンドロステンジオンというステロイドホルモンが混入されていたとの検査結果が示されている。なお、選手は継続的に11種類のサプリメントを使用していたとのこと。
表1.X選手が使用していたサプリメント一覧
出所:「仲裁判断」別紙3より抜粋
さらに興味深いのが、Jarrow FOMULAS社のQH-absorbというコエンザイムQ10に、オキサンドロロンというステロイドホルモンが検出されたことである。しかし、選手からオキサンドロロンは検出されていない。これは試合前に取っていたQH-absorbのボトルと、検体として提出したQH-absorbのボトルは違うものであったという事情がある。コエンザイムQ10という身近なサプリにもトラップが潜んでいることには驚いた。
ビタミン、コエンザイムQ10やL-カルニチンなどのビタミン様物質は禁止されていません。しかしこれらに種々の強壮剤を配合した製剤、特に外国製品には禁止物質を含むものがあります。「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック2017年版」
アナバイトの場合、たまたま試合直前で使用したアナバイトが少量残っており、製造番号が同じであるボトル(④2)と一緒に検体として提出している。
仲裁の申し立てをしていなかったら、当初の決定である4年間の資格停止処分のままになっていたので、費用と労力をかけてでも仲裁に持っていった意味は大いにあったと言える。
そして、本件ANAVITEを含む本件サプリメントを摂取する必要性について、申立人は、他のほとんどの選手がサプリメントを摂取していたことから申立人のみサプリメントを摂取しないという選択は採り得なかった旨供述し、(中略)、認識されるべきであったリスクの程度との関係において、申立人の「過誤の程度」は決して軽視できるものではない。「仲裁判断JSAA-DP-2016-001号事案」
「他のほとんどの選手が」というくだりは耳の痛いところで、勝つために効果のありそうなサプリは違法ではないのでガンガン摂取していますよ、というカルチャーが婉曲的に表現されてしまった。
瞬発力が必要なトラック競技での活動が主ならば、筋トレ等での追い込みやその疲労回復でサプリを常用していたことは想像に難くない。ロディオラ・ロゼアのような精神面に作用しそうなサプリもリストにあるのが興味深い。サプリがやる気スイッチになっていた可能性がある。
なお、アナバイトにはカリフォルニア州法によると発がん性のある物質が使用されている(二酸化クロム)。iHerbでは「その他の成分を見てゾッとしました。体感が良かっただけに残念ですがリピは絶対にやめます」というレビューが寄せられている。
カリフォルニア州プロポジション65
https://oehha.ca.gov/media/downloads/crnr/p65single07072017.pdf
他に注目すべき記録として、グーグル検索をして情報が確認できるできないの議論が本文でなされており、このあたりは現代的だなと思う。複数のブログでギャスパリ社製品のドーピング事案が確認できれば、そもそもその確認作業を怠ったとして、選手の過失を問うことができるわけである。
今回の判例(?)で、ギャスパリ社製のサプリで禁止物質が出たのが2例目となった。ゆえにギャスパリ社製のサプリでうっかりドーピングをしてしまいました(だから許してね)のような言い訳が今後は通用しない可能性がある。薬剤師会では次のような注意を促している。
海外ではラベルに表示しないままに不正に興奮薬やステロイドの医薬品成分を添加したサプリメント製品が多数流通し、そのような製品による陽性も毎年報告されているため、製造基準や製品管理の品質が不明な製品の使用は避けることが賢明です。「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック2017年版」
ではサプリメントに違法薬物がどのくらいの確率で入っているのだろうか。
表2.サプリメントにタンパク同化ホルモンが混入されている確率
出所:Geyer H, Parr MK, Mareck U, Reinhart U, Schrader Y, Schänzer W. Analysis of non-hormonal nutritional supplements for anabolic-androgenic steroids – results of an international study. International Journal of Sports Medicine, 2004, 25, 124-129.
薬剤師会が示唆しているように、違法薬物を製造過程におけるうっかり混入ではなく、わざと添加している説がある。添加サプリを使用した消費者は体感として効果を感じることができるかもしれないので、一部の消費者はamazonやiHerbに高評価を入れる。それが呼び水となって企業はより儲かる。検査などはサプリメント検査団体への献金や、政治献金で何とかするという手法があるので、ちゃんとしてそうな会社の不正というのは全く不思議ではない。
しかし微量の混入にホルモン剤としての効果があるのかは疑わしい。知り合いの薬剤師によれば、アナバイトを過剰摂取していたとしても、ステロイドホルモンの経口摂取が数マイクログラムにしかならないので、効果があるかは微妙とのことである。
未来のドーピング
筆者は科学に関して素人である。以下の内容はサドルの神様のお告げであると言っておく。「ドーピング=薬」というのは定番であるが、徐々に変容していくだろう。
人工筋肉あるいは培養筋肉
コンプレッションタイツの次の段階で、タイツそのものが伸び縮みするような機能をつける。レースではすでにアームウォーマー等の着用が認められないケースもあり、見た目にインチキがわかりやすいのが難点だ。
もう少し先の未来では移植技術や再生技術の発展により、培養筋肉を装備できるようになる。自転車競技では、腰回りや脚の筋肉を増やせばパフォーマンスの向上が期待出来るため、培養された人工筋肉をくっつける選手が現れる。
代表者ミーティングでコミセールが「こんなものが落ちていました。とても恥ずべき事です!」とハンドルの中に仕込んでいた重りをぶら下げる(大○原クリテのP)というのは過去のことで、坂の手前ではぎ取ったと思われる使い捨て培養筋肉をぶらぶらさせる。
ナノ血球
筋肉をつけても酸素が回らなければ意味がない。特定の筋肉に効率的かつ選択的に酸素を供給するナノ血球を注入することになる。発想としては血液ドーピングの延長線上にある。何らかの方法でナノ血球自身が肺を介さずに酸素を交換できるとかできないとか。太ももの表面に黒いブツブツが浮かび上がり、エラ呼吸のごとく太もも呼吸をしている脚たちが公道を駆け抜ける。
ゲノム編集
遺伝子をいじることで、特定のスポーツに適した人間にデザインできる未来が迫っている。筋肉や心肺機能を有酸素系(あるいは無酸素系)にステータスを振ることで、労せずしてパフォーマンスの向上を図れる。才能そのものをアップさせると言っても過言ではない。しかし、ゲノム編集で脚の筋肉を増やそうとデザインしたつもりが、なぜかアゴの筋肉が発達するという事案が発生してしまう。
判断ドーピング
優れた肉体を手に入れても、技術や判断・戦術がイマイチならば宝の持ち腐れである。結局、ゲームに勝つために必要なのはチームの戦術であり、個人の頭脳である。脳科学も相当の発展を遂げており、優れた選手の脳をスキャンすることで、その選手の経験値を含めた戦術眼や判断能力などをコピーできるようになる。脳の一部を電脳化するなどして、先人の脳を自分の脳に取り込めるのだ。例えば以下のクラシックな頭脳は高値で取引されている。ちなみに監督は人工知能になる。
ステージレースで勝利するための合理性と効率性「○ルーム」
曲芸のような下りから頭突きに負けない驚異のバランス感覚「サ○ン」
TTでのペーシングと筋肉の使い方をレクチャー「マ○ティン」
これであなたも大逃げ職人「ヴォクレー○」
アシストとして優れたコミュ力と状況判断能力「ド○チャン」
アマチュアレースに勝利し全日本選手権を完走する知性「タ○オカ」
ただし、脳がいくら優れていても神経が発達していないとかえって危険を招く場合がある。また他人の脳に頼りすぎると自己同一性が揺らぎ、特にU23には有意に悪影響を与えるということで、やはりこれも禁止されてしまう。
Zwift英会話(&レースtips)
簡単な英会話で中学生で習うような単語がほとんどである。以下は実際に見かけたチャットを筆者が意訳したものである。
"front ease please. "
「先頭は緩めてね」
先頭が速い時のコメント。パワー指定されたイベントでリーダーからよく発せられる。
"slow down front."
"2.0W/kg MAX"
"easy rolling"
"stay with a Beacon (and Bacon which is me)."
などバリエーションは多い。
"leader?"
「リーダーは?」
イベントで整列している時に問いかけられる。リーダーがいないイベントでは、スタート直後に集団が分裂することが多い。スタートダッシュに備えるべし。
"great group."
「いい集団だ。」
一定のペースで走る集団で仲間を称え合うコメント。と同時にペースの変化を抑制する狙いがあるかもしれない。ブルベ系のイベントで淡々と走っている時に連発されることがある。応用として「うちのクラブよりもちゃんとした集団だ」などの冗談がある。
"I am out at 50km."
「50km地点で離脱する。」
1〜2時間淡々と走る集団で途中抜けするときのコメント。挨拶代わりのコミュニケーションである。他の仲間が"good job."などとねぎらう。2時間近く走るイベントだと、数十人いた集団がいつの間にか数人にまで減ることがある。3本ローラーだと尻的にきつい。
"don't get mad."
「まあそう怒るなよ」
"zpower guy"を連発していたライダーに対するコメント。パワーを盛っているライダーが同一の集団にいるのが癪に触ったのだろう。気にしても仕方のないことなんだけど。
"hunt and pick him up."
「彼を狩って拾おうぜ!」
第2集団で走っている時に、第1集団から落ちてきたライダーが数十秒前にいる時のコメント。前にいるライダーが意外と粘ったりすることがあるので面白い。いかにも狩猟民族的な表現である。
"OOO is really strong. not C."
「OOOはマジで強いぞ。Cなわけない。
4.0W/kgを平気で出し続けるライダーに対するコメントである。レースでは名前の後ろに自分のランクを表示させている人も多い。このライダーは最終周で4.5W/kgで引き始める。余りにも強いので "Shame on you!" 的なツッコミが入る。
なんちゃってCのライダーは1位ではなかったものの、平均パワーが高かったため、zwiftpowerでもれなくAランク認定されていた。
"settle. a half way long."
「落ち着け。まだ半分あるぞ。」
中盤で集団が伸びた時のコメント。短い登りではパワーが上がるため縦長になることがある。油断しているとあっさり千切れる場合があり、復帰するのに5.0W/kgを1分以上出すしかないなんてことも。
"awareness guys."
「気づきってことだろ。」
文脈としては、中盤のアップダウンにて「集団が分裂した」というつぶやきに対するコメントである。坂であったり他の集団が混ざったりする箇所は集団から離れやすくなるので、いち早く危機を察知することが肝要である(といった後方集団への皮肉が込められているのだろうか?)。特に中盤以降は脚にきていることがあるので、集団復帰は容易ではない。
"predators all around."
「化け物がうようよしてやがるぜ。」
最終周で集団が活性化し始めた時のコメントである。このコメントを打っている人が実は最強のプレデターという説も。
"thanks all. good race!"
「ありがとう。いいレースだった!」
1分弱を7倍前後で踏むプレデター達がゴール後にお互いを称え合う。コメントを打つのが遅いと、同じ集団だったライダーはもうすでにいなかったりする。
レースtips
①スタートダッシュ
②短い坂
③巡航時の上げ下げ
④勝負所のアイテム
⑤スプリント
①スタートダッシュ
レースにもよるが、リーダーなしのレースだとスタート直後にばらける。第1第2集団で走りたい場合はスタートダッシュが重要である。
アバターが速度を上げ始めるのにタイムラグがあるため、スタート数秒前に200-300Wまで挙げておき、画面がカクカクしている間の混乱を乗り切る。実業団レースと違って、前に100人いてもパワーだけですり抜けられるのはある意味楽である。
ただしレースによっては300Wダッシュでも第2集団以下になることがある。マリオカートのロケットスタートが使えればという感じ。
②短い坂
ここはリアルと同じでインターバルがかかりやすい。かけるのが遅れるとじわじわ離れる。遅れると平地や下りに入った時に、体格に勝る外国人の集団に追いつくのに300Wオーバーで踏むことになる。分岐点の先にちょっとした坂がある場合も要注意だ。
コツとしては、坂に入る少し手前で集団の中頃から出力を上げ始める。後ろからドラフティング効果とすり抜け効果を利用しつつ前に上がり、勢いのまま集団の先頭付近をキープすると慌てなくて済む。
③巡航時の上げ下げ
集団内ではできるだけ一定の出力を維持する。リアルとは違って、一定のペースで走っていれば勝手に先頭に出たり引っ込んだりする。さながら熱せられたビーカーの中を対流する水のようである。
例えば先頭に出たときに2.5W/kgに落とし、集団から離れそうになって3.5W/kgに上げるなんてことをしていると、無駄にスタミナを消費してしまう。3.0W/kgで集団に磁石のようにくっついていられるのであれば一定出力がベターである。楽に効率よく回す練習になるし、心拍も低くなりやすい。場合によっては外国人ライダー(体重が重いであろう人)よりも巡航時のPWRが低くなることがある。
④勝負所のアイテム
マリオカートでは赤甲羅の使い所が勝負を分けるが、Zwiftでもアイテムの使い方が割と重要になる。上手いライダーはここぞというタイミングで羽や車などを使う傾向にある。
リアルでもバーチャルでも短い坂が勝負所となる場合が多い。群馬CSCだと心臓破りの坂がそれに当たる。Zwiftレースでは、最終局面の短い坂で30秒7倍を出していても集団から置いて行かれることがあり、ここで羽があったらなあと思うことがある。
集団から遅れてもエアロブースト等があれば何とかなる場合もある。エアロ仲間で集団を追いかけたりもする。エアロヘルメットはなかなか強力で、30秒9倍弱の子鹿スプリントでも外国人勢の10倍以上スプリントになぜか対抗できることがある。レース後に「アイテムの使い所がわかったぜ!」というコメントを書き込むライダーもちらほら。
大集団の後ろからロケットスタートしたい場合には、スタートと同時に車(ドラフティング効果↑)を使いつつ数十秒〜1分のフルもがきをするという手もある。ただし盛大にタレる可能性あり。
⑤スプリント
私の場合、もともとスプリント力がない上に、パワーに勝る外国人には勝ち目が薄いというのが率直な感想である。3本ローラーということもあるが、瞬間的に数百ワットは違う気がする。軽量級でもスプリント力のあるライダーはいるので一概には言えないが、スプリントにならないような展開を作る必要がある。
プロショップと人間関係と私
Photo by chelsom tsai
1.プロショップの役割
プロショップでロードを買うと、自分でも知らないうちにそこの人間関係の輪に加わる可能性がある。この辺については輪生相談で議論が展開されている。栗村氏は相談者の高校生に対して、以下のようなアドバイスをしている。
人間関係って、大変です。プラスの方向に働けばいいのですが、中にはそうでない場合もある。だから、ちょっと冷たいようですが、まずい方向に転がり出したときに離脱できるよう、ライトな形に留めておいたほうがいいかもしれません。
高校生に対してこの回答は凄い。「いつでも離脱できるようなライトな形」というのは至言である。ではなぜ自転車のプロショップでは往々にしてそのようなことが起こり得るのであろうか?
プロショップに期待される役割は以下の4つがあると考えられる。
①自転車に関連する財・サービスの取引
②ショップの練習会における楽しさやスキルの提供(または潜在的顧客の開拓)
③顧客が集まるコミュニティ・憩いの場の提供
④顧客を中心としたチームの運営・維持管理
他にもあるかもしれないが、プロショップは①〜④で成り立っていると仮定する。自転車で特徴的なのは①〜④が同一の場所・メンバーで構成されやすい。あるショップの輪の中で完結することになる。ゆえに濃くなってしまう。
例えばフットサルでは、以下のような感じになる。
①ゼビオからの楽天
②フットサル場でのスクール・個サル
③体育館フットサルと付随する食事会
④市リーグ・県リーグのチームでの練習
フットサルは①〜④のサイクルにおいて、通常は異なる場所あるいはメンバーになる。
フットサルとは違い、自転車は機材スポーツであるがゆえ、購入からレースまでプロショップに依存しやすい環境は間違いなくある。
2.プロショップのカルト化
プロショップをビジネスとしてみた場合、顧客を増やしつつもその輪を維持しながら、いかにしてある価格帯の自転車を常連に買い支えてもらうか、が1つ重要なのかもしれない。
上記①〜④のサイクルは、常連さんをお店に通わせ続ける良い仕組みであると考えられる。前提として店主やスタッフの高い技術力、卓越したコミュニケーション能力、チームのマネジメント能力、場合によっては高い走力やスキルまで要求されるかもしれない(ここは走力・スキル・人望を兼ね備えた(?)常連さんにアウトソーシングすることも可能ではある)。
カルトというのは本来悪い表現である。しかしビジョナリーカンパニーだか何かの本によれば、良い会社の条件に「カルト的である」という要素があるのだという。この場合のカルト的というのは、そこの従業員らが会社やその事業に対して、何か信仰心にも似た熱い想いがあり、それが結果的に利益を生み続けることで従業員も会社もハッピー、と解釈している。全然関係ないけどカルト的な映画は面白い。
カルト化は自転車のプロショップにおいても重要な一側面だと思う。①〜④のサイクルで顧客にお店に対する帰属意識を高めてもらい、お店メンバーシップの重要な一員として顧客を位置付ける。顧客もまたメンバーシップの一員であることを、心のどこかで良いことだと感じる。そしてローディ的な自己重要感が芽生えた結果、ある種の雰囲気が醸成されていく。
これがプロショップに初めて入った時に感じる違和感ではないかと思われる。一見さんお断りまではいかない、あの空気である。
常連さんがお店のジャージに身を包み、足並みが揃ったバイクにまたがって仲良しグループが形成されている(私はこの光景を否定しているわけではない)。繰り返しになるが、この状況は①〜④のサイクルの全部または一部が上手く回っていることを意味する。
3.カルト化の問題点
近年ではSNS等で練習相手を募りやすくなったとはいえ、プロショップだと購入からレースまでという構造になり、どうしてもカルト的になりやすい。プロショップで起きがちな現象に以下のようなことがある。
①メンバー間に何か暗黙の了解みたいなものがある。
②地域に根ざしたムラ社会なので、粘着質になる場合がある。
③排他的な傾向が強いと、他流派との交流が歓迎されないことがある。
④メンバー内での志向の違いや恋愛感情で軋轢が生まれると面倒くさいことになる。
⑤いくつかの特定バイクが礼賛される傾向にある。
①〜⑤にどの程度まで違和感を感じるかで、お店に対するスタンスというのが自ずと決定されてくる。地域に根ざしたプロショップでは、様々な噂や情報が店長に集約されてしまうので、自分が知っていることは他のメンバーも当然のように知っている。輪生相談で栗村氏が何がしかの経験から「ライトな付き合い」を推奨しているのは、想像に難くない。
これらを自明のこととして、仲良しクラブという安住の地に身を置くのもまた良し。私はというと、家庭の都合によりショップ人間関係の重要性が相対的に低い。が、人間関係のメカニズムとその背景みたいなものについては、理解を深めるべきだろう。
抽象的にトラブルの火種を列挙すると、ポタ勢vsガチ勢、集団内の脚力格差、初心者と遠慮、機材の蘊蓄、OOはワシが育てた説、おじさんと女性との距離感、一見さんへの口出し、走り方と村八分、OOは敵という共通認識、チーム練の仕切り、落車と事故etc。
これを書いてて思い出されたのは「スウィートヒアアフター」という映画。あの映画みたいにそこまで大げさなものではないんだけど。
ところでフットサルの熟練者に話を聞くと、やはり様々なプレースタイルの人とやり合うことは上達の過程において、極めて重要なことだという。
ブルベでのパワーメーターの使い方
1.練習の強度管理
もう少し速く走れれば楽だ、帰りの輪行に確実に間に合いたい、PBPで完走するのに脚力がもう少し必要だ、という人はそれなりにいると思う。例えばローラーで一定の強度を維持するために、パワーメーターはとても便利である。
ブルベの練習はブルベでしかできない、というのは一理ある。装備の使用感の確認やトラブル時の対処は、ブルベかそれに近いロングライドでしかできないこともある。でも脚力をアップさせる手段は、長距離の走り込みだけとは限らない。
ブルベで速く走るといっても、ほとんどの時間は低強度での走行となる(L1、L2、たまにL3)が、練習ではその上の強度を狙う。経験則で言えばL3、L4での走り込みが有効である。低強度でも速くはなるが、社会人が平日に行うには効率が悪い。休日にL2、L3メインで距離を稼ければなお良い。
以前、心拍計メインで練習していた時にSSTだと思って練習していた強度が、実はテンポ走(L3)だったことがある(これはこれで良い練習だが)。練習での強度管理ではパワメに優位性がある。走り始めの20分くらいは心拍が低く出る傾向にあるので、心拍ベースだと強度が低いケースが出てくる。
丁寧なペダリングでのテンポ走20分、SST10-20分、たまにタバタなどを地味に続ければ、ブルベで必要十分な脚力はついてくるはず。
2.ケガの予防
実はブルベはケガの発生率が高いのではないか、と思うことがある(証拠はないが)。重装備かつ低ケイデンスでグイグイ登ることが意外と多い。膝や腰に疲労が蓄積され、痛みに襲われることも少なくない。それでも漕がないと家に帰れないので、漕ぐしかない場面も多々ある。
パワメの良い点は、登りでの踏み過ぎがすぐわかることにある。足腰が強い人は登りで踏み倒してもあまり問題は生じないだろうが、それでも限界というものがある。ケイデンスにもよるが、L3以上の時間が長いとダメージを受けやすいという感覚がある。
ベテランっぽい人はこの辺をよく心得ている感じがする。道中で脚が売り切れると辛くなって安全マージンがなくなるからというだけではない。フォームが崩れて変なペダリングになり、ケガのリスクが高くなることを、嫌というほど理解しているからかもしれない。
3.ペーシング
望ましいペーシングというのは永遠の課題だろう。距離やその時の疲労度にもよるが、ちょうどよいパワーはL1上からL2中にあると思われる(体重×1.5-2.5倍)。
最初から最後まで一定パワーで走るのが速いのか、それとも最初は強めでだんだん自然に弱くなる方が速いのかは、経験的にはよくわからない。しかし『パワートレーニングバイブル』によれば、強めに入った方が結果的に速く走れるとしている。
心拍ベースで合わせると自然と後者の走り方になる傾向にあるので、パワーではなく心拍一定で走る方が速くなると言える。そうするとなんだやっぱりパワメいらないじゃん、となるかもしれない。
ちなみにパワメと心拍の両方をモニタリングすると、異常が数値で把握できるので面白い。140拍120Wがある人にとっての普通だとする。ブルベ中に何か調子が悪いのでサイコンにふと目を落とすと、140拍80Wになっている。これは普通ではない。何らかの対処が必要と判断される。
経験的には、疲労感が強い時、酷暑の時、標高が高いところでの登坂時、脱水気味の時、ハンガーノック一歩手前の時に異常値が出やすい。
ペースを決めるのにTSSから逆算するという方法もある。全体のTSSを抑えたいから、このくらいのペースで走ろうという使い方だ。
土井選手が本で書いているように、TSSが400を超えるとかなりしんどくなってくる。これはレースでもブルベでも同じだと思う。例えば300kmブルベをTSS400前後にしたい場合には、以下のようなサイトで望ましい強度が把握できる。