ゆるポタ日記

自転車関係などの雑記帳です。

プロショップと人間関係と私

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Photo by chelsom tsai 

 

1.プロショップの役割

ロードバイクを買う時に2つの選択肢があるとする。量販店や通販でロードを買う場合とプロショップでロードを買う場合である。もちろんMTBやシクロという選択肢もあるが、便宜上ロードと表現する。

 

プロショップでロードを買うと、自分でも知らないうちにそこの人間関係の輪に加わる可能性がある。この辺については輪生相談で議論が展開されている。栗村氏は相談者の高校生に対して、以下のようなアドバイスをしている。

 

人間関係って、大変です。プラスの方向に働けばいいのですが、中にはそうでない場合もある。だから、ちょっと冷たいようですが、まずい方向に転がり出したときに離脱できるよう、ライトな形に留めておいたほうがいいかもしれません。 

 

高校生に対してこの回答は凄い。「いつでも離脱できるようなライトな形」というのは至言である。ではなぜ自転車のプロショップでは往々にしてそのようなことが起こり得るのであろうか?

 

プロショップに期待される役割は以下の4つがあると考えられる。

 

①自転車に関連する財・サービスの取引

②ショップの練習会における楽しさやスキルの提供(または潜在的顧客の開拓)

③顧客が集まるコミュニティ・憩いの場の提供

④顧客を中心としたチームの運営・維持管理

 

他にもあるかもしれないが、プロショップは①〜④で成り立っていると仮定する。自転車で特徴的なのは①〜④が同一の場所・メンバーで構成されやすい。あるショップの輪の中で完結することになる。ゆえに濃くなってしまう。

 

例えばフットサルでは、以下のような感じになる。

①ゼビオからの楽天

②フットサル場でのスクール・個サル

③体育館フットサルと付随する食事会

④市リーグ・県リーグのチームでの練習

 

フットサルは①〜④のサイクルにおいて、通常は異なる場所あるいはメンバーになる。

 

フットサルとは違い、自転車は機材スポーツであるがゆえ、購入からレースまでプロショップに依存しやすい環境は間違いなくある。

 

2.プロショップのカルト化

プロショップをビジネスとしてみた場合、顧客を増やしつつもその輪を維持しながら、いかにしてある価格帯の自転車を常連に買い支えてもらうか、が1つ重要なのかもしれない。

 

上記①〜④のサイクルは、常連さんをお店に通わせ続ける良い仕組みであると考えられる。前提として店主やスタッフの高い技術力、卓越したコミュニケーション能力、チームのマネジメント能力、場合によっては高い走力やスキルまで要求されるかもしれない(ここは走力・スキル・人望を兼ね備えた(?)常連さんにアウトソーシングすることも可能ではある)。

 

カルトというのは本来悪い表現である。しかしビジョナリーカンパニーだか何かの本によれば、良い会社の条件に「カルト的である」という要素があるのだという。この場合のカルト的というのは、そこの従業員らが会社やその事業に対して、何か信仰心にも似た熱い想いがあり、それが結果的に利益を生み続けることで従業員も会社もハッピー、と解釈している。全然関係ないけどカルト的な映画は面白い。

 

カルト化は自転車のプロショップにおいても重要な一側面だと思う。①〜④のサイクルで顧客にお店に対する帰属意識を高めてもらい、お店メンバーシップの重要な一員として顧客を位置付ける。顧客もまたメンバーシップの一員であることを、心のどこかで良いことだと感じる。そしてローディ的な自己重要感が芽生えた結果、ある種の雰囲気が醸成されていく。

 

これがプロショップに初めて入った時に感じる違和感ではないかと思われる。一見さんお断りまではいかない、あの空気である。

 

常連さんがお店のジャージに身を包み、足並みが揃ったバイクにまたがって仲良しグループが形成されている(私はこの光景を否定しているわけではない)。繰り返しになるが、この状況は①〜④のサイクルの全部または一部が上手く回っていることを意味する。

 

3.カルト化の問題点

近年ではSNS等で練習相手を募りやすくなったとはいえ、プロショップだと購入からレースまでという構造になり、どうしてもカルト的になりやすい。プロショップで起きがちな現象に以下のようなことがある。

 

①メンバー間に何か暗黙の了解みたいなものがある。

②地域に根ざしたムラ社会なので、粘着質になる場合がある。

③排他的な傾向が強いと、他流派との交流が歓迎されないことがある。

④メンバー内での志向の違いや恋愛感情で軋轢が生まれると面倒くさいことになる。

⑤いくつかの特定バイクが礼賛される傾向にある。

 

①〜⑤にどの程度まで違和感を感じるかで、お店に対するスタンスというのが自ずと決定されてくる。地域に根ざしたプロショップでは、様々な噂や情報が店長に集約されてしまうので、自分が知っていることは他のメンバーも当然のように知っている。輪生相談で栗村氏が何がしかの経験から「ライトな付き合い」を推奨しているのは、想像に難くない。

 

これらを自明のこととして、仲良しクラブという安住の地に身を置くのもまた良し。私はというと、家庭の都合によりショップ人間関係の重要性が相対的に低い。が、人間関係のメカニズムとその背景みたいなものについては、理解を深めるべきだろう。

 

抽象的にトラブルの火種を列挙すると、ポタ勢vsガチ勢、集団内の脚力格差、初心者と遠慮、機材の蘊蓄、OOはワシが育てた説、おじさんと女性との距離感、一見さんへの口出し、走り方と村八分、OOは敵という共通認識、チーム練の仕切り、落車と事故etc。

 

これを書いてて思い出されたのは「スウィートヒアアフター」という映画。あの映画みたいにそこまで大げさなものではないんだけど。 

 

ところでフットサルの熟練者に話を聞くと、やはり様々なプレースタイルの人とやり合うことは上達の過程において、極めて重要なことだという。