クリティカルパワー(CP)の計算
GoldenCheetahを使っていてCPやAWCの意味が気になったので整理する。
『パワー・トレーニング・バイブル』によると、運動強度と時間に関する理論にクリティカル・パワーというものがあるとのこと。1960年頃に発表されたオリジナルの方程式は以下になる。
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t = AWC/(P-CP)
t:疲労困憊するまでの時間、P:現在のパワー、CP:仕事量の漸近線、AWC:この式における比例定数 p.73
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引用終わり。単位として、tは秒数、PとCPはワット数、AWC(Anaerobic Work Capacity:無酸素作業容量)はJ(ジュール)である。
意味的にはPを平均パワーに置き換えてもよいだろう。GoldenCheetahではCPとAWCは自動的に算出されてくる。そうすると、ある時間において、維持できる限界の出力でペーシングしたい時のパワーを求められる。
t = AWC/(P-CP)
このオリジナルの方程式をPについて解くとこうなる。
P = AWC/t + CP
N=1だが実際の当てはまりはどうだろうか。GoldenCheetahによれば、直近28日のCPは213W、AWCは28kJ(28,000J)と出ているので所与の値として扱う。
AWCの計算根拠はよくわからない。AWCを経験則から考えると、ごく初期のサイクリングでありがちな、実力以上に勢いよく走って失速するまでに使ったエネルギーだろうか。レース的に言えば、マッチの本数と大いに関連しているような気がする。5分で燃え尽きるのか、20分で燃え尽きるのか、それが問題だ。
AWCは使い切ったその日には再生不可能と言われている。が、感覚的には脚が空っぽになった後でも、休憩すればマッチが数本復活している気がする。それは本当の意味では使い切ってないのかもしれないけど。
以下の実測値には、5分と20分のローラー台(AP)とそれ以外の坂の実走(NP)が混ざっているが、同列に扱って比較してみる。
表1.パワーの実測値と推計値の比較
時間 | Stages実測値(1) | 方程式から求めた値(2) | (2)-(1) |
44:14 | 222W | 224W | +2W |
20:00 | 235W | 236W | +1W |
8:11 | 284W | 270W | -14W |
5:00 | 302W | 306W | +4W |
1:00 | 452W | 680W | +228W |
出所:筆者作成
5分〜44分は実測値とそれほど変わりない。しかし1分走は脚が売り切れに近い状態の値であったことを考慮にいれても、かなりの誤差が発生している。この値のズレは、ごく短時間のパワーにおいてAWCを過大評価してしまう方程式の性質や、私自身の脚質に依存するところが大きいと思われる。
無酸素運動容量の全てを1分で使い切るほどの筋肉はないとも言える。ちなみに計算上の5秒の値は5813Wである。これは脚がもげる。
なお60分以上のパワーは、『サイクリスト・トレーニング・バイブル』によると、以下の簡易的な計算で求められる。
30分CP×95% = 60分CP
60分CP×97.5% = 90分CP
90分CP×95% = 180分CP
参考文献
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