つよポタミア

自転車関係の雑記帳です。

修善寺にマンセボ

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にわかサイクルロードレースファンからみた「JBCF第2回修善寺ロードレース」の感想である。以下、選手らの敬称は省略する。

 

タイムアウトの基準 

 

「下田にペリー」みたいなタイトルだが、自転車界にとってはちょっとしたインパクトがあったように思う。修善寺のDay2でJプロツアーの選手が105名中99名がタイムアウトという異例の事態が生じた。

 

まずはツール総合4位の実績を持つマンセボを含む逃げ集団が想像以上に速かった、というのはあるだろう。そして安全管理の都合上、タイムアウトを4分半から5分と最初から決められていたのが、プロの大半がリタイヤになった理由の1つである。だが、この設定の仕方は半分間違っている。なぜなら、プロとアマでは集団の構成のされ方が違うからである。

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図1.アマチュア(特にE2、E3)の集団

 

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図2.Jプロツアーの集団 

 

マチュアとプロが同一の日に同一の場所でレースを行うため、競技規則は原則的にアマでもプロでも統一されているようである。

 

マチュアに関しては4分半でタイムアウトを宣告するのは正しい。アマでありがちな構図(図1)では、集団から千切れることは基本的に走力の不足を意味する。したがって、千切れたら先頭との差は開くばかりである。先頭集団が1周8分半で回るのに対して、脚を使い果たした千切れ組は10分以上はかかるため、最大でも先頭から5分でレースから下ろすのは、安全面から言って妥当である。なお、最終周回に入るタイミングにおいて7〜8分遅れで通すのは、安全上問題ない。

 

一方のプロ集団は、少数の逃げを容認した後は集団が落ち着くという展開になることがよくある(図2)。アマは先頭とのタイム差をコントロールする術はないが、プロのメイン集団にはそれがある。集団がその気になれば、5分差からでもある程度までは詰められる。ドラフティング効果がそれほどではない修善寺だとしてもだ。

 

そもそもの間違いは、プロとアマで同一のタイムアウト基準を適用したことにあると考えられる。ただし、マンセボインパクトを狙って大量のリタイヤをあえて出したという見方もできなくはない。

マンセボ劇場

今年からレースが映像でも観られるようになった。ライブリザルトの配信も面白い。

www.youtube.com

 

Day2のレース概要 時間は動画内の時間

1:27 湊の単独逃げ

「サンキュー湊」

1:35 マンセボ動く

2:27 中田動く、マンセボ静観

「ナカータに触れたとたん動きました」

2:35 マンセボ動く、10名程度の集団崩壊

2:49 メイン集団タイムアウト、コース上は10名以下

3:16 マンセボアタック、吉岡つけず

マンセボ選手はインナーに入れてるんですかね? このコースで」

3:20 アイランが単独でマンセボに合流

4:04 マンセボ速やかにクールダウン

 

映像で断続的にしか観ていなかった部分はあるが、解説の廣瀬GMの「レースをご覧の方は、誰が一番強いのかよくわかったと思います」の言葉通りのマンセボ劇場であった。

 

圧巻は19周目(動画3:16ごろ)である。解説は「マンセボが吉岡やアイランのペースを合わせているだけで、いつでもいける」と事前に指摘しており、後はタイミングの問題であったことがうかがえる。

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図3.修善寺のコースプロファイル

出所:JBCF「テクニカルガイド」(①〜④は筆者加筆) 

 

マンセボがアタックしたポイントは、2号橋からピークに差し掛かる少し手前である(図3①)。少しの平坦から登りの角度がきつくなるこのポイントは、走ってて最も辛く感じる箇所の1つである。映像からではわからない息づかいやペダリングの様子などから判断したのだろう。アイランの後ろに下がってから勢いをつけてのアタック(図4)に、吉岡はなす術がなかったという印象である。

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図4.マンセボアタック

 

ピークのヘアピンから下りに入る局面で、バイクがマンセボを追いかけ始めるが、その姿がなかなか見えない。つまり、マンセボはアタックから下り始めまでかなり踏んでいたことになる。30秒500Wは軽く出ていたのではないだろうか。

 

これはプロ集団全体に言えることだが、ピークから下り始めるまでの踏み方が凄い(図3②)。下位のアマや脚のなくなったプロはこの辺でゆるゆると踏むことしかできないが、強い選手はインコースの植木に接触するのではないかという勢いで回していく。

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ホームストレート手前の傾斜がきつくなるあたりで、カメラが追いつく(図3③)。ここであることに気付いた廣瀬GMマンセボアウター疑惑を口にする。このコースでアウターのみは考えられないのだが・・・。

 

アイランが仕掛けた詳細な地点が不明だが、ホームストレートに入った時点でアイランは吉岡を突き放していた。ホームストレートからの登りで後ろを確認したマンセボは、アイランが単独で来ていることを確認し、脚を緩めている(図3④)。そして登りのピークでマンセボはアイランと合流する。解説からは「勝負あった」のコメント。修善寺の地形はこうやって使うのかと感心した。廣瀬GMらの解説もわかりやすく、レースの面白さを的確に伝えていたように思う。

 

仮にアイランにそれほど余力がなかったとしても、マンセボはそのまま先行し勝ちを確定させ、アイランは吉岡の後ろで回復してから、どこかで突き放してワンツーを決めるという選択肢も考えられた。詰めロード的にこれは次善の手であろうか。

 

2021年からJBCFの裾野を広げ、一般的なサイクリストも参加できるような新リーグの構想もあるということで、非常に興味深い。上から下まで幅広くランク分けをしているドイツサッカーリーグのような感じだろうか。

 

一方で、Jプロツアー選手の賃金が全体的に低いと言われているのは気がかりである。具体的には、例えば3部以上のプロと言える選手に対する最低賃金はいくらにするのか、といったことである。資金源を確保するためにレプリカジャージを現地で販売するなどの泥臭いことが必要かもしれない(もちろんこれにはリスクが伴う)。

 

蛇足だが、現状ではE1のメイン集団(あるいはE2、E3)とJプロツアーのメイン集団の平均年収を比較した場合、おそらく学生を含めてもE1メイン集団の方が明らかに高いだろう。