富士チャレンジソロ200km
出走まで
荷物運びや受付で7:30になったので、雨の中を試走する。第1コーナーのエスケープゾーンで初心者講習を行っていた。30人くらいだろうか。前回コースアウトしたそでがうらエンデューロのことがあるので、コース外の状況も観察した。
あまり選手が走っていないのをいいことに、わざと縁石に乗り上げたり、立ち止まって縁石の手触りを確かめたりした(本当はしてはいけない)。縁石はボコボコ波打っており、硬くざらざらしていた。また縁石の真横にトラップのような窪んだ排水溝が確認された。
タイヤは1回しか雨天走行してないミシュランPower Competition(前7.0後7.5)。ボトル2本を含め車重は10kgぐらい。今日の雨コーデはオイルを塗り塗りして体幹の保温を重視。薄手のアームカバーとシューズカバー、サイクルキャップも着ける。
スタートが10:00と時間があるので、コーヒーやスポドリを1Lほど摂取する。身体を温める程度にローラーを回し、9:40頃に並び集団の真ん中に位置する。
1-10周目
ブレーキの大合唱で、周囲の選手は丁寧に走っていた。数周もするとバラけてきたので、脚のありそうな選手に付き位置気味で走る。逆バンクの第1コーナーは鬼門で「また第1コーナーで落車です」のアナウンスが聞こえる。
第1コーナーを曲がっている最中に軽くトルクをかけたら、リアがズルっといった。安全マージンが15%あると思ったら5%もないことに気が付いたので、タイヤ感覚を修正する。以後、ビビリながらバイクを立てて曲がる。
Power Competitionはウェットの市街地走行ではあまり滑る感覚はなかったのだが、レーススピードとなると接地感に欠ける。これ雨だとダメなやつか。良くも悪くもPro4SCとは完全に別物。
第1コーナーでは、リアに荷重を移しつつブレーキをふわりとかけ、アウト側をスローカーブのような軌道で曲がる。この時ハンドル右側を少しだけ押し込む。こんなライン取りしている選手は他にいないぞ。すると下りで回すため余計な脚を使う。
下り後の左コーナーがまた怖いので、脚を止めるまたは最小限のトルクで、カットボールのように小さく切れる軌道で曲がる。間違ってもシュート回転にはしない。たまたまコース外スタッフが、遅めの選手に声掛けしていたので助かった。
途中で先頭集団に付いていったが、あまりにも速いので1周で降りる。走行中にサイコンを見る余裕はなく、後で確認すると6:40、NP247と普通じゃない強度であった。先頭集団での展開はFTP300弱ないと厳しいだろうな。入りは7:30前後のペースで平均時速が36km/hである。
11-20周目
膀胱が膨れていく感覚と共に、レース前のコーヒーが脳裏をよぎる。12周目で早速ピットインし尿意から解放される。ピットレーンに出たところでヘルメットを着け忘れていることに気づき、慌てて戻る。最悪死ぬところだった。
アトリエ列車に乗車させてもらい7:30ペースを刻む。すると再び尿意に襲われる。尿カテ入れて走りたいと本気で思った。20周目でピットインし、今度はヘルメットを着用したまま膀胱を空にする。後2回は行くのだろうかと思うとテンション下がる。
21-30周目
当てにしていた竹芝列車が全く見当たらない。代わりに脚の合う7-8名の集団で走る。データを見返すと7:30-7:50と順調にペースを刻んでいた。先程とは違うアトリエの選手がとりわけ脚があるようで半ば機関車化していた。集団の構成員に大きな変動はなく、淡々と列車は進んでいく。ようかんやカロリーメイトを消化し、終盤に備える。
31-40周目
集団に1人元気な選手がおり、知り合いがいるのか時々コミュニケーションを取っている。30数周目だろうか。休憩から復帰してきてより元気になったのか、ホームストレートで「20秒間隔で回していこう!」の音頭が取られる。この時、私は5、6番目だった。
直後の第1コーナーで、その選手が先頭でインからやや突っ込み気味に入る。バイクが傾いて横倒しになる。2番目の選手が巻き込まれ連鎖的に落車。瞬間、蜘蛛の子を散らすように回避行動へと移る。と同時にコース外にいるスタッフから笛が鳴らされる。
倒された2番目の選手がアウト側にスライドしてくる。無意識にブレーキングは危険と判断したのか、そのまま直進してコースアウト。思ったよりエスケープゾーンは広く、斜めに下りながら後方をチラ見する。
後続は来ていなかったので、勢いのままに縁石を乗り越えコースに復帰。この間5-10秒。なぜかマリオカートを思い出した。集団は5名に減る。皮肉にも、先程とはまるで別の生き物のようにスムーズに列車が回り始める。
その後集団は離合集散を繰り返し、気が付いたら一人旅に。完全に垂れたのでフォルジーク山梨の6時間半列車に2周ほど避難。フォルジーク列車は5人でシェルターを作り、平地と下りで速く、登りでゆっくりとお手本のような走りをしていた。数十人の大所帯も納得である。
41-44周目
少し速い列車に乗り継ぎ、脚を使い切る。前を走る選手がかなり消耗した様子だったが、気合いで踏み倒す漢っぷりにサムズアップ。
再び雨が激しくなり、曇り止めを塗ったはずのメガネ兼グラサンが曇りまくる。重要なのは前を見て真っ直ぐに走り、周りの誰も信じないことだ。一番信用できないのは自分のタイヤなんだけど。まばらになったコースで直線だけ踏み、後はセーフティに。
帰宅後、同居の親族にレースの様子を報告すると「そこに集まる人達はバカなの? 税金の無駄遣いでしょ(救急車の出動などが)」と言われ、返す言葉がなかった。自身の機材リスクに関してはもちろん報告していない。
走行データ
6時間8分、201km、149W(NP196)、85rpm、148/179bpm、ダンシング率6.4%、16.6℃、3277kJ(W'252kJ)、TSS369
ダンシングをしたらめちゃくちゃ筋肉痛になった
出所:『サイクリング解剖学』
最近は虚弱体質が改善されてきたと思っていたが、まだまだ貧弱なようだ。
金曜日に、短時間高強度に順応するため1分走を5セット行った。うち3回はブラケットを握ってのダンシング、1回はシッティング、残り1回は半々となる。頑張っても平均パワーは430-470Wと体重の7倍程度しか出ないが、レストは10分で実施した。
練習直後は大腿四頭筋にかなりの刺激が入った感覚があり、膝が痛くなるかもしれないと思った。これを行う数日前にゆっくり目のダンシングで重心を中央に持ってくるよう意識付けていた。
土曜日、予定していなかったロングに出かけることになった。懸念された膝痛はない。ところがキッチンの下にあるものを取ろうとしたときに、背中にピシっと痛みが走った。これ以上痛くなるようだったら、途中で引き返してこようと思ったが、自転車にまたがると痛みはどこかへ行ってしまう。結局150km走り、特に身体の変調はなく帰宅した。
日曜日、全身がだるかったが前日のロングから考えれば不思議ではない。体幹がいつもよりダメージを受けていることに気づく。ただ、プランクやサイドプランクを試しに少しだけ行ってみたところ、痛みが増強するわけではない。
月曜日、目が覚めたら脇腹に激痛が走っている。何だこれは。寝返りを打とうとするが打てない。寝返りを打つために手足を振り子のようにして身体を回転させる。それでも痛い。腹圧をかけ、痛みに耐えながら回転する。というか腹圧をかけると差し込むような痛みに襲われる。
朝食を作るためにキッチンの下に手を伸ばし、腰を曲げるとまたしても脇腹に激痛が。「ぐぇぇ〜」とカエルのような声を出しながら身体を起こす。痛みで身体が麻痺するような感覚を覚える。不自然に直立した姿勢で痛みに耐えていると、ボルタレンが出てきた。自転車関係の痛みで漢方以外の薬を飲むのは初めてかもしれない。もはや生活に支障をきたしているレベルなので、迷わず1錠を摂取する。効果は6時間。その間に回復してくれることを願う。
これはおそらく腹斜筋の損傷によるものだろう。以前に錦織選手が脇腹の肉離れを起こしたことがあったが、これは確かにテニスどころではない。
1分走の全力ダンシングという慣れない動作でまず脇腹がやられたと思われる。そこに追い打ちをかけるようなロングである。デッドリフトやスクワットで脚や背中の筋力は増加したが、腹部がおろそかになっていた可能性がある。フォームの改善(?)で身体の捻られ具合が変化したのも一因かもしれない。
Zwiftワークアウトをいくつか行ってみた
ここでは単発のワークアウトを取り上げる。何のために行うワークなのか理解していないものもあるが、とりあえずやってみたものを挙げる。
John's Mix
ワークアウトでまず目に入るのがこれ。入りがキツいレースを想定しているのか、最初に1分6倍が3セットきて、その後スプリント数回、ペース走の強度で落ち着く。短いバージョンもあるが、寒いときに行うと膝を痛くしそうなワーク。
The Gorby
The Wringer
平坦クリテを想定したワークだろうか。30秒全力を12回繰り返すシンプルなものだが、レスト時間がだんだん短くなる中盤以降はただの拷問と化す。だいたい半分終えたら神の休憩タイムに入るので、ワークに忠実な形で完遂したことはない。3本ローラーだとオールシッティングになるため、瞬間的な強度が出にくい。インターバル開始3秒前から踏み始めると、Perfectが出やすい。
The McCarthy Special
10分程度の坂でのふるい掛けが想定される拷問系ワーク。L4、L5、L6と3分ごとにビルドアップしていく、と書くと大したことないように思える。実際にはたった1セットで挫折する。完遂できる気がしない。
SST(Short)
これが意外にもキツくて完遂したことがない。40分連続SSTという苦行。余裕な人とそうでない人の差が激しいかもしれない。シッティングでずっと行っていると尻が痛くなってくるため、ダンシングを適度に入れる必要あり。完遂できれば短時間で効率よくフィジカルを底上げできる良いワークだろう。ウォームアップ時間が短いのが難点。
High Intensity Recovery
FTPのちょい上とちょい下を3分ごとに行ったり来たりする18分を2セット行う。TTやクライマー向けのワークの気がする。ちょい下の部分がむしろキツいため、1セット行って挫折しかける。2セット目は指定の強度より数十ワット下げて行うインチキをしてもなお平均心拍数が1セット目と同じという有様。これも完遂には至っていない。
SST(Med)
SST30分を2回行う。5分レストの間に1分vo2maxのバーストが入るため、あまり休めない。一応完遂できたが、体力と時間に余裕がある時でないと厳しい。TSSを100近く稼げる。
Mat Heyman Paris Roubaix 1
序盤はL3で巡航し、中盤からL3の合間にL6バーストが入るワーク。エンデューロっぽくて実践的だと思う。入りはそれほど辛くないが、最後の方で心拍がきっちり上がるのでそれほど楽ではない。
The Mega
とてもやる気がしないワーク。
関連記事
ペダリング効率を簡単に上げる方法
そもそもペダリング効率に意味があるのか、という疑問がある。
「ペダリング効率いまいち使えねーな」という意見は理解できる。
そしてレース全体を通したペダリング効率の平均値に意味があるかというと、微妙である。平均値としての効率が高いことと競技成績の良さは、上述の理由によりそれほど明確な相関を示さないと推定される。
ペダリング効率は、レース中のモニタリング(サイコンすらあまり見ないだろうが)およびレース後の振り返りの両方の場面において、意味を見いだしづらい。情報としてどう扱えばよいのか理解に苦しむ。効率は横に置いといて、ベクトルを重視すべきという見解もうなづけるものがある。
効率を高めることで速く走れるのか、あるいは脚が溜められるのかというと、そうでもない。集団内で脚をペダルに乗せているだけ時の効率は非常に悪いが、確実に脚を休められる(運動効率と機械効率の関係については以下の書籍を参照されたい)。
しかし、ペダリングモニターのサイトによれば、競技レベルが高い選手の方がどの出力においてもペダリング効率が良いので、効率に意味がないということはない。特に高強度におけるペダリング効率の重要性が示唆されている。
実際のレース観戦時に、プロとアマでは一定時間維持の高強度ペダリング(踏むより回す)に差があると感じた。回すというのは、大腿四頭筋への1点集中負荷を防げる反面、体の前面も背面も余すところなく使うので、より疲労を感じることがある。
プロはペダリングスキルが高いだけでなく、回すペダリングに耐えうる筋肉や心肺を有していると考えるのが自然である。したがって、ペダリング効率というのは、スキルだけでなく、腰回りの大筋群をどれだけ使えているかという指標にもなり得るのではないだろうか。
一方で、効率が良すぎても筋肉疲労が著しくなることから、適切な効率というのは選手によって異なる可能性がある。ラッファー曲線(最適な税率を超えると逆にトータルの税収は下がるというシムシティ的な)のような曲線が思い浮かぶ。
今現在の私のフィジカルおよびスキルだと、FTP付近を一定時間で丁寧に回す場合、バランス良く筋肉を使えている時の効率が、55-60%になるのではという気がする。
さて本題だが、ペダリング効率をわずかではあるが、しかしはっきりと変化させる方法をたまたま発見した(ただしN=1)。
ある日、10分前後の坂でヒルリピートをしていた時である。疲労が溜まっていたので、SST強度でできるだけ楽をして登ることを意識していた。
もう少し尻を使えた方が楽に登れるのではないかと思い、BYCYCLE CLUBの臀筋ペダリングの特集を思い出そうとした。が、何も思い出せなかった。
小雨で体が冷えたのかお腹が痛くなり、そのうちにペダリングがどうでもよくなった。波状攻撃にやられたためコンビニで休憩した。
そこでふとある動画を思い出した。
休憩後、ある動画の一部を延々と脳内再生させながら登った。するとペダリング効率(そしてよく見ればベクトル)が明らかに変化していた。脚をああしようこうしようと試行錯誤しながら登っている時よりも無理やり感がなく、良い感じだった。
以前に空手の師範が、突き蹴りを練習する際に何らかのイメージ(感触だとか視覚だとか)を持って行うことがすごく大事、と言っていたのを思い出す。そして脱力が極めて重要だとも。
これは自転車にも当てはまりがよく、2時3時付近で一瞬力を加え、なるべく早めに脱力する。私の場合、脱力が遅いと6時付近のベクトルが大きく下に伸びる。
ケイデンスが低いヒルクライムの場合には、ボディ打ちの要領で気持ち踏み出しを早めに、やや長めに力をかける。長すぎると下死点でのベクトルが・・・となる。脱力がある程度できているなと思ったら、腿を持ち上げる程度に抜重する。引き脚というよりは軽めの膝蹴りに近い。
ある動画の中で、スペシャルなアクションを起こした後、単独で逃げているシーンがある。
非常に弾力的でありながら滑らかにペダルが回されているのが、何とも印象的だった(プロの走りは多かれ少なかれそうなんだけど)。3本ローラー上なら「シャーシャーシャーシャー」ではなく「シャーーーーーーーーーーーー」というきれいな音が聞こえてきそうなペダリングだ。ただ今の自分のレベルでは長時間持つペダリングではないかもしれない。
その選手のペダリングそのものをイメージしていたら、それが神経を経て筋肉に伝わり、今までとは違う筋肉が動員されたと推測される。モノマネである。科学的に言えば、模倣や共感に関わるとされるミラーニューロンに関連づけられる。
イメージ想起からの半ば無意識的な走りなので、その走り方を再現するのが難しいといったデメリットはあるものの、試してみる価値はある方法ではある。
トイレ我慢中のペダリング。11分17秒(信号あり)145拍
イメージ想起中のペダリング。11分24秒(信号あり)147拍
Mt.富士ヒルクライムでブロンズ90分を切るための攻略法
Mt.富士ヒルクライムのコースは、路面が良くて道幅も広く、4%の緩斜面と7%の急斜面が交互に出現して走りやすいといった印象がある。 このコースを攻略する上で、以下の基本的なポイントが挙げられる。
1. ウォームアップ
2. 補給量
3. ビルドアップ
4. 風向きと緩斜面と平坦区間
1と2は個人差が大きいため省略。
3については、1時間全力で維持できそうなペースの10-15%減から入る(主催者選抜の部を除く)。勾配が緩む4km過ぎからペースをどの程度上げるかどうかは、本番での調子次第となる。もちろん急に上げるわけではなく、ビルドアップ気味に上げていくイメージで。
4はあらかじめ考慮する余地がある。「てんきとくらす-富士山」などで当日にはおおよその風向きが予想できる。ただし、前日に晴れ予報が出ていても、当日に土砂降りでコースが短縮されるという可能性もある(例:2015年乗鞍ヒルクライムスプリント)。
富士ヒルのコースでは、6~12kmまでは西向き、13~17kmは南向き、20km~は東向きに走るので、特に向かい風区間(主催者選抜の部であれば横風区間)はどこになりそうかを把握する。山の天候は難しいので、予報は必ずしも当てにはならないが。
また自分がどういう走り方をするタイプなのかを、把握するのは損ではない。例えばこのような登坂マトリックスが考えられる。図にある緩斜面というのは4%未満、急斜面というのは7%以上をイメージしている。
出所:筆者作成
もしレース中のある時点において、自分と比べて周囲のライダーが「①急斜面も緩斜面も速い」または「④急斜面も緩斜面も遅い」のであれば、そもそも自己申告タイムが間違っているか、何らかのトラブルで出遅れた状況が考えられる。つまり①や④の状況では周囲との差を考慮する必要がない。単独TTをするしかない。
赤いマスは、相対的に「②急斜面で速く、緩斜面で遅い」タイプで、体重が軽く急斜面でタイムを稼げるクライマー系の人である。急斜面でも重力を感じさせないヒラヒラとした軽快な登坂がイメージされる。
一方の青いマスは、相対的に「③急斜面で遅く、緩斜面で速い」タイプで、重量級または平坦系の人がイメージされる。緩斜面でタイムを稼ぐべく、意識的に回している人もこのタイプに属する。私自身がおそらくこれに当てはまる。
そこで少しでもタイムを縮める(あるいは脚を節約する)ためのシンプルな策は、緩斜面において、自分より少しだけ速い人への付き位置を試みることである(怒られない程度に)。相対的に速すぎる人はペースが乱れるだけなので付かない。横風区間でも、風下に入ることで多少は楽ができる。もっとも本番では、向かい風区間で自然発生的に列車が形成されるのかもしれないが。
例えば、下図のAさんからDさんの4人は、富士ヒル90分の走者とする。だが踏み方がそれぞれ微妙に異なる。この場合、緩斜面ではAさんはBさんをターゲットに、BさんはCさんを・・・となる。ではDさんはどうすればいいのか。Eさんを探すか、いなければ先頭交代を促す。
出所:筆者作成
しかし実際には、ある瞬間において周りの人が、結果的に自分と同程度のタイムになるかどうかはわかりえない。例えば自分がBだとしたら、Cさんだけでなく、Fさん(自分よりタイムが良い)やGさん(自分よりタイムが悪い)にも付くことができる。
出所:筆者作成
90分切り狙いであれば、周りに人がわんさかいるはずなので、お友達探しにはそれほど困らないだろう。走り方がある程度シンクロしていれば、パックで先頭交代しながら走るのもよい。
最後の平坦区間ではトレインの恩恵が大きいので、21km通過後から平坦が速そうな集団や人を見繕っておく。脚が残っていなくても、後ろに付けば少し休めるのでここは頑張る。数少ない経験から言えば、ピチピチのチームジャージを着たガチムチの浅黒いおじさんは、平坦が速い傾向にある。
なお、私はMt.富士ヒルクライムに参加したことがないため、現時点では机上の空論でしかないことを明記しておく。
あと精神的に垂れそうな16km過ぎで、shotzなどでのカフェイン注入は人によっては凄く効果があるかも。メイタンや眠眠打破でもいいけど。
自転車乗りが筋トレをする理由
そもそも筋トレが自転車競技に必要かそうでないかは意見の分かれるところで、全く筋トレをしない選手もいれば積極的に行う選手もいる。
『サイクリスト・トレーニング・バイブル』によれば、筋力アップは持久力向上に寄与するが、VO2maxは変化しないとしている。また筋力強化により疲労困憊までの時間が長くなり、故障リスクを逓減できると書かれている。筋トレにより筋肉と腱との結合部分という弱い部分の強化できるとのこと。
栗村修氏は輪生相談にて、心肺や筋肉をエンジンとし、膝や腰をシャーシに喩えて回答をしている。氏は経験則から、欧米人に比べ日本人はたぶんシャーシが弱いと指摘しており、ロード乗りは特定の部位を鍛えるためにボディビルを学ぶべきだと主張している。
加齢による筋力の低下も筋トレの必要性の1つである。筋肉の権威である石井教授は、「一番落ちやすい大腿四頭筋の場合、25〜30歳をピークに、筋肉は1年につき1%ずつ細くなっていきます。」「筋繊維の中でも、とくに速筋繊維の割合が40歳頃を境に減っていく。(中略)速筋繊維を維持するには、大きな筋力を発揮する運動が最適。」(『石井直方の筋肉まるわかり大辞典』pp.60-61)と解説している。
私の経験則としては、サッカーやフットサルのコンタクトの強さやケガ予防において、筋トレの効果を感じたことがある。
最近は週1回かそれ以下の頻度で、デッドリフト、スクワット、余裕があればランジを行っている。腹筋も適宜行う。ただし、腹筋以外の筋トレをした場合、その翌日はまともに乗れないことが多いので、目に見えるパフォーマンス(FTPなど)の成長は遅くなる。
筋トレは自転車の乗り込みには明らかにマイナスで、その疲労がレース日まで残ると本末転倒ですらある(実際になった)。しかし、プロのように短期で結果を出す必要が全くなく、長期でケガ予防になれば筋トレの意味は大いにあるだろう。
まだ筋トレを始めて数ヶ月だが、膝や腰の違和感や疼痛の減少、全身的な疲労感の減少、短時間走が行いやすくなったなどの効果をじわじわと感じている。体重の変化はあまりなく、むしろ減少傾向にある。おそらく長期的には体重は増えるだろうが。
スクワットよりもデッドリフトを優先するのは、体幹を鍛えたいということがまずある。他には高強度シッティングで尻や背中の筋肉を動員するようなペダリングに効果があり、なおかつ高重量に耐えられる足腰の養成がケガ予防になるのではないかという理由がある。
あとはデッドリフトにしか使わないリフティングストラップを買ってしまった、というサンクコスト効果(貧乏根性)もあるかもしれない。
そもそも筋トレを再開するようになったきっかけは、ある筋からの情報と周囲の環境変化という偶然によるところが大きい。ガチムチのバディがいると筋トレに対する意識が変容してしまうのである。
関連記事:「自転車乗りが筋トレをする理由(改)」
Aerobic / Anaerobic TISSとは
GoldenCheetah3.3で、しれーっと追加されているTISSが気になった。
Aerobic / Anaerobic TISS(以下、Ae / An)とは、TSSを有酸素系と無酸素系に分けたもの、と理解している。
GoldenCheetah上では、Ae powerは5分以上のパワー、An powerは1分以下のパワーになっている。1分から5分の間はその中間ということだろうか。
TISS(Training Impact Scoring System)はグラフを見る限りではTSSと似たようなものである。TSSについては以前にこんな記事を書いたことがある。
Ae TISSは、TSSと値は違うもののグラフの波形が近似していることから、ワークの大半を占める有酸素系に対する負荷を示していることがわかる。
An TISSは、Ae TISSとはグラフの波形が明らかに異なる。無酸素系(厳密に言えば無酸素ではないが)に刺激が入ることではじめてグラフが変化する。
GoldenCheetahの"Anaerobic Response"では、An TISS(Short Term Stress)が、W'およびp-maxと紐付けられている。つまり、無酸素領域に刺激が入った(W'balが動いた)→An TISSが溜められると推察される。
Anaerobic TISSの動き
ユーザー側がざっくりと理解するためには、実走からのデータを確認するのがてっとり早い。下図の青い線はAn TISS(Short Term Stress)、赤い線はAn TISS(Long Term Stress)である。
出所:筆者のGoldenCheetah(①〜⑧は追記)
青い線に変化があった①から⑧の無酸素領域に入ったワークを思い出してみる。
① W'work: 33kJ, 20分240W, 1分400W
② W'work: 65kJ, 16分250W(間欠的に300-400W)
③ W'work: 62kJ, 200km(ごく一部300-500Wの信号ダッシュ)
④ W'work: 137kJ, 10km×10周(毎周250-350Wの坂インターバル)
⑤ W'work: 41kJ, 1分×5(400W前後、5分レスト、ローラー)
⑥ W'work: 151kJ, 150km(250-400Wの信号&坂インターバル)
⑦ W'work: 90kJ, 30-30秒300W×8, 1分400W以上×5, 2分350W×1
⑧ W'work: 32kJ, 120km(間欠的に300-400W)
こうしてみると高強度インターバルでじわじわ負荷をかけつつ、チーム練などの市中牽き回しの刑でガツンと無酸素系に刺激が入る傾向にある。なお、300kmブルベにおけるW'workは8kJと、ほとんど無酸素領域に入っていない。
肝心なことはAn TISSが溜まることで、どのような能力の向上が予測できるかということだが、無酸素領域のパフォーマンスに関連していることは明らかである。具体的には、W'、p-max、1分パワーや繰り返し能力、あるいは回復速度の向上に関連しているのではないだろうか。日本では競輪学校が無酸素系領域の強化に関するノウハウを蓄積しているはず。
→「自転車トレーニングの理論」CS-net