ゆるポタ日記

自転車関係などの雑記帳です。

ペダリング効率を簡単に上げる方法

そもそもペダリング効率に意味があるのか、という疑問がある。

 

半年間ペダリングモニターを使った率直な感想としては、練習の積み重ねでペダリング効率が上昇したとしても、それがパワーの増加によるものなのか、ペダリングスキルの向上によるものなのかは、判別しづらい。

 

ペダリング効率いまいち使えねーな」という意見は理解できる。

 

ペダリング効率の特徴の1つは、パワーが上がるにつれて効率(%)が良くなることにある。ペダリングが雑であろうが丁寧であろうが、高強度ではそれなりの数値が出る。

 

そしてレース全体を通したペダリング効率の平均値に意味があるかというと、微妙である。平均値としての効率が高いことと競技成績の良さは、上述の理由によりそれほど明確な相関を示さないと推定される。

 

ペダリング効率は、レース中のモニタリング(サイコンすらあまり見ないだろうが)およびレース後の振り返りの両方の場面において、意味を見いだしづらい。情報としてどう扱えばよいのか理解に苦しむ。効率は横に置いといて、ベクトルを重視すべきという見解もうなづけるものがある。

 

効率を高めることで速く走れるのか、あるいは脚が溜められるのかというと、そうでもない。集団内で脚をペダルに乗せているだけ時の効率は非常に悪いが、確実に脚を休められる(運動効率と機械効率の関係については以下の書籍を参照されたい)。

しかし、ペダリングモニターのサイトによれば、競技レベルが高い選手の方がどの出力においてもペダリング効率が良いので、効率に意味がないということはない。特に高強度におけるペダリング効率の重要性が示唆されている。

 

実際のレース観戦時に、プロとアマでは一定時間維持の高強度ペダリング(踏むより回す)に差があると感じた。回すというのは、大腿四頭筋への1点集中負荷を防げる反面、体の前面も背面も余すところなく使うので、より疲労を感じることがある。

 

プロはペダリングスキルが高いだけでなく、回すペダリングに耐えうる筋肉や心肺を有していると考えるのが自然である。したがって、ペダリング効率というのは、スキルだけでなく、腰回りの大筋群をどれだけ使えているかという指標にもなり得るのではないだろうか。

 

一方で、効率が良すぎても筋肉疲労が著しくなることから、適切な効率というのは選手によって異なる可能性がある。ラッファー曲線(最適な税率を超えると逆にトータルの税収は下がるというシムシティ的な)のような曲線が思い浮かぶ。

 

今現在の私のフィジカルおよびスキルだと、FTP付近を一定時間で丁寧に回す場合、バランス良く筋肉を使えている時の効率が、55-60%になるのではという気がする。

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さて本題だが、ペダリング効率をわずかではあるが、しかしはっきりと変化させる方法をたまたま発見した(ただしN=1)。

 

ある日、10分前後の坂でヒルリピートをしていた時である。疲労が溜まっていたので、SST強度でできるだけ楽をして登ることを意識していた。

 

もう少し尻を使えた方が楽に登れるのではないかと思い、BYCYCLE CLUBの臀筋ペダリングの特集を思い出そうとした。が、何も思い出せなかった。

 

次にクレヨンしんちゃんのイメージが浮かんだ。お尻プリプリ星人である。しかしペダリングの参考になる動きとは言い難い。

 

小雨で体が冷えたのかお腹が痛くなり、そのうちにペダリングがどうでもよくなった。波状攻撃にやられたためコンビニで休憩した。

 

そこでふとある動画を思い出した。

 

休憩後、ある動画の一部を延々と脳内再生させながら登った。するとペダリング効率(そしてよく見ればベクトル)が明らかに変化していた。脚をああしようこうしようと試行錯誤しながら登っている時よりも無理やり感がなく、良い感じだった。

 

以前に空手の師範が、突き蹴りを練習する際に何らかのイメージ(感触だとか視覚だとか)を持って行うことがすごく大事、と言っていたのを思い出す。そして脱力が極めて重要だとも。

 

突きを入れる場合、インパクトの瞬間はフルパワーだけれども、それ以外では脱力することで結果的に突きの威力が増すという。ボディ打ちの場合は、インパクトの時間が長くなることから、やや力を加える時間が長い。

 

これは自転車にも当てはまりがよく、2時3時付近で一瞬力を加え、なるべく早めに脱力する。私の場合、脱力が遅いと6時付近のベクトルが大きく下に伸びる。

 

ケイデンスが低いヒルクライムの場合には、ボディ打ちの要領で気持ち踏み出しを早めに、やや長めに力をかける。長すぎると下死点でのベクトルが・・・となる。脱力がある程度できているなと思ったら、腿を持ち上げる程度に抜重する。引き脚というよりは軽めの膝蹴りに近い。

 

ある動画の中で、スペシャルなアクションを起こした後、単独で逃げているシーンがある。

 

非常に弾力的でありながら滑らかにペダルが回されているのが、何とも印象的だった(プロの走りは多かれ少なかれそうなんだけど)。3本ローラー上なら「シャーシャーシャーシャー」ではなく「シャーーーーーーーーーーーー」というきれいな音が聞こえてきそうなペダリングだ。ただ今の自分のレベルでは長時間持つペダリングではないかもしれない。

 

その選手のペダリングそのものをイメージしていたら、それが神経を経て筋肉に伝わり、今までとは違う筋肉が動員されたと推測される。モノマネである。科学的に言えば、模倣や共感に関わるとされるミラーニューロンに関連づけられる。

 

イメージ想起からの半ば無意識的な走りなので、その走り方を再現するのが難しいといったデメリットはあるものの、試してみる価値はある方法ではある。

 

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トイレ我慢中のペダリング。11分17秒(信号あり)145拍

 

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 イメージ想起中のペダリング。11分24秒(信号あり)147拍

 

 

 

Mt.富士ヒルクライムでブロンズ90分を切るための攻略法

Mt.富士ヒルクライムのコースは、路面が良くて道幅も広く、4%の緩斜面と7%の急斜面が交互に出現して走りやすいといった印象がある。 このコースを攻略する上で、以下の基本的なポイントが挙げられる。

 

1. ウォームアップ

2. 補給量

3. ビルドアップ

4. 風向きと緩斜面と平坦区間

 

1と2は個人差が大きいため省略。

 

3については、1時間全力で維持できそうなペースの10-15%減から入る(主催者選抜の部を除く)。勾配が緩む4km過ぎからペースをどの程度上げるかどうかは、本番での調子次第となる。もちろん急に上げるわけではなく、ビルドアップ気味に上げていくイメージで。

 

4はあらかじめ考慮する余地がある。「てんきとくらす-富士山」などで当日にはおおよその風向きが予想できる。ただし、前日に晴れ予報が出ていても、当日に土砂降りでコースが短縮されるという可能性もある(例:2015年乗鞍ヒルクライムスプリント)。

 

 

 

富士ヒルのコースでは、6~12kmまでは西向き、13~17kmは南向き、20km~は東向きに走るので、特に向かい風区間(主催者選抜の部であれば横風区間)はどこになりそうかを把握する。山の天候は難しいので、予報は必ずしも当てにはならないが。

 

また自分がどういう走り方をするタイプなのかを、把握するのは損ではない。例えばこのような登坂マトリックスが考えられる。図にある緩斜面というのは4%未満、急斜面というのは7%以上をイメージしている。

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 出所:筆者作成

 

もしレース中のある時点において、自分と比べて周囲のライダーが「①急斜面も緩斜面も速い」または「④急斜面も緩斜面も遅い」のであれば、そもそも自己申告タイムが間違っているか、何らかのトラブルで出遅れた状況が考えられる。つまり①や④の状況では周囲との差を考慮する必要がない。単独TTをするしかない。

 

赤いマスは、相対的に「②急斜面で速く、緩斜面で遅い」タイプで、体重が軽く急斜面でタイムを稼げるクライマー系の人である。急斜面でも重力を感じさせないヒラヒラとした軽快な登坂がイメージされる。

 

一方の青いマスは、相対的に「③急斜面で遅く、緩斜面で速い」タイプで、重量級または平坦系の人がイメージされる。緩斜面でタイムを稼ぐべく、意識的に回している人もこのタイプに属する。私自身がおそらくこれに当てはまる。

 

そこで少しでもタイムを縮める(あるいは脚を節約する)ためのシンプルな策は、緩斜面において、自分より少しだけ速い人への付き位置を試みることである(怒られない程度に)。相対的に速すぎる人はペースが乱れるだけなので付かない。横風区間でも、風下に入ることで多少は楽ができる。もっとも本番では、向かい風区間で自然発生的に列車が形成されるのかもしれないが。

 

例えば、下図のAさんからDさんの4人は、富士ヒル90分の走者とする。だが踏み方がそれぞれ微妙に異なる。この場合、緩斜面ではAさんはBさんをターゲットに、BさんはCさんを・・・となる。ではDさんはどうすればいいのか。Eさんを探すか、いなければ先頭交代を促す。

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出所:筆者作成

 

しかし実際には、ある瞬間において周りの人が、結果的に自分と同程度のタイムになるかどうかはわかりえない。例えば自分がBだとしたら、Cさんだけでなく、Fさん(自分よりタイムが良い)やGさん(自分よりタイムが悪い)にも付くことができる。 

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出所:筆者作成

 

 90分切り狙いであれば、周りに人がわんさかいるはずなので、お友達探しにはそれほど困らないだろう。走り方がある程度シンクロしていれば、パックで先頭交代しながら走るのもよい。

 

最後の平坦区間ではトレインの恩恵が大きいので、21km通過後から平坦が速そうな集団や人を見繕っておく。脚が残っていなくても、後ろに付けば少し休めるのでここは頑張る。数少ない経験から言えば、ピチピチのチームジャージを着たガチムチの浅黒いおじさんは、平坦が速い傾向にある。

 

なお、私はMt.富士ヒルクライムに参加したことがないため、現時点では机上の空論でしかないことを明記しておく。

 

あと精神的に垂れそうな16km過ぎで、shotzなどでのカフェイン注入は人によっては凄く効果があるかも。メイタンや眠眠打破でもいいけど。

 

自転車乗りが筋トレをする理由



そもそも筋トレが自転車競技に必要かそうでないかは意見の分かれるところで、全く筋トレをしない選手もいれば積極的に行う選手もいる。

 

『サイクリスト・トレーニング・バイブル』によれば、筋力アップは持久力向上に寄与するが、VO2maxは変化しないとしている。また筋力強化により疲労困憊までの時間が長くなり、故障リスクを逓減できると書かれている。筋トレにより筋肉と腱との結合部分という弱い部分の強化できるとのこと。

 

栗村修氏は輪生相談にて、心肺や筋肉をエンジンとし、膝や腰をシャーシに喩えて回答をしている。氏は経験則から、欧米人に比べ日本人はたぶんシャーシが弱いと指摘しており、ロード乗りは特定の部位を鍛えるためにボディビルを学ぶべきだと主張している。

 

 

また栗村氏は筋トレを始めてから全身の筋肉を意識できるようになり、たいぶ速くなったと述べている(『栗村修のかなり本気のロードバイクレーニング』)。

 

加齢による筋力の低下も筋トレの必要性の1つである。筋肉の権威である石井教授は、「一番落ちやすい大腿四頭筋の場合、25〜30歳をピークに、筋肉は1年につき1%ずつ細くなっていきます。」「筋繊維の中でも、とくに速筋繊維の割合が40歳頃を境に減っていく。(中略)速筋繊維を維持するには、大きな筋力を発揮する運動が最適。」(『石井直方の筋肉まるわかり大辞典』pp.60-61)と解説している。

 

私の経験則としては、サッカーやフットサルのコンタクトの強さやケガ予防において、筋トレの効果を感じたことがある。

 

最近は週1回かそれ以下の頻度で、デッドリフト、スクワット、余裕があればランジを行っている。腹筋も適宜行う。ただし、腹筋以外の筋トレをした場合、その翌日はまともに乗れないことが多いので、目に見えるパフォーマンス(FTPなど)の成長は遅くなる。

 

筋トレは自転車の乗り込みには明らかにマイナスで、その疲労がレース日まで残ると本末転倒ですらある(実際になった)。しかし、プロのように短期で結果を出す必要が全くなく、長期でケガ予防になれば筋トレの意味は大いにあるだろう。

 

まだ筋トレを始めて数ヶ月だが、膝や腰の違和感や疼痛の減少、全身的な疲労感の減少、短時間走が行いやすくなったなどの効果をじわじわと感じている。体重の変化はあまりなく、むしろ減少傾向にある。おそらく長期的には体重は増えるだろうが。

 

スクワットよりもデッドリフトを優先するのは、体幹を鍛えたいということがまずある。他には高強度シッティングで尻や背中の筋肉を動員するようなペダリングに効果があり、なおかつ高重量に耐えられる足腰の養成がケガ予防になるのではないかという理由がある。

 

あとはデッドリフトにしか使わないリフティングストラップを買ってしまった、というサンクコスト効果(貧乏根性)もあるかもしれない。

 

そもそも筋トレを再開するようになったきっかけは、ある筋からの情報と周囲の環境変化という偶然によるところが大きい。ガチムチのバディがいると筋トレに対する意識が変容してしまうのである。

 

 

Aerobic / Anaerobic TISSとは

GoldenCheetah3.3で、しれーっと追加されているTISSが気になった。

 

Aerobic / Anaerobic TISS(以下、Ae / An)とは、TSSを有酸素系と無酸素系に分けたもの、と理解している。

 

GoldenCheetah上では、Ae powerは5分以上のパワー、An powerは1分以下のパワーになっている。1分から5分の間はその中間ということだろうか。

 

TISS(Training Impact Scoring System)はグラフを見る限りではTSSと似たようなものである。TSSについては以前にこんな記事を書いたことがある。

GoldenCheetahのPMCにおける計算式

 

Ae TISSは、TSSと値は違うもののグラフの波形が近似していることから、ワークの大半を占める有酸素系に対する負荷を示していることがわかる。

 

An TISSは、Ae TISSとはグラフの波形が明らかに異なる。無酸素系(厳密に言えば無酸素ではないが)に刺激が入ることではじめてグラフが変化する。

 

GoldenCheetahの"Anaerobic Response"では、An TISS(Short Term Stress)が、W'およびp-maxと紐付けられている。つまり、無酸素領域に刺激が入った(W'balが動いた)→An TISSが溜められると推察される。

 

Anaerobic TISSの動き

ユーザー側がざっくりと理解するためには、実走からのデータを確認するのがてっとり早い。下図の青い線はAn TISS(Short Term Stress)、赤い線はAn TISS(Long Term Stress)である。

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出所:筆者のGoldenCheetah(①〜⑧は追記)

 

青い線に変化があった①から⑧の無酸素領域に入ったワークを思い出してみる。

 

① W'work: 33kJ, 20分240W, 1分400W

② W'work: 65kJ, 16分250W(間欠的に300-400W)

③ W'work: 62kJ, 200km(ごく一部300-500Wの信号ダッシュ)

④ W'work: 137kJ, 10km×10周(毎周250-350Wの坂インターバル)

⑤ W'work: 41kJ, 1分×5(400W前後、5分レスト、ローラー)

⑥ W'work: 151kJ, 150km(250-400Wの信号&坂インターバル)

⑦ W'work: 90kJ, 30-30秒300W×8, 1分400W以上×5, 2分350W×1

⑧ W'work: 32kJ, 120km(間欠的に300-400W)

 

こうしてみると高強度インターバルでじわじわ負荷をかけつつ、チーム練などの市中牽き回しの刑でガツンと無酸素系に刺激が入る傾向にある。なお、300kmブルベにおけるW'workは8kJと、ほとんど無酸素領域に入っていない。

 

肝心なことはAn TISSが溜まることで、どのような能力の向上が予測できるかということだが、無酸素領域のパフォーマンスに関連していることは明らかである。具体的には、W'、p-max、1分パワーや繰り返し能力、あるいは回復速度の向上に関連しているのではないだろうか。日本では競輪学校が無酸素系領域の強化に関するノウハウを蓄積しているはず。

 

→「自転車トレーニングの理論」CS-net

 

 

W'balとは

W'bal (W' balance) とは、高強度用エネルギーのバッテリー残量、と解釈している。

 

W'は「ダブリュープライム」と発音する。「わらてん」ではない。

 

以下は『40 Goals: W'bal its implementation and optimisation』と『GoldenCheetah』の受け売りである。

 

2015年末にGoldenCheetah3.3がアップデートされ、W'関連の解析がより充実した。W'についてほとんど知らなかったため上記サイトで理解を深める。客観的な指標重視のホビーレーサーにとっては、W'balは非常に重要な概念であると思われる。

 

W'とCPの関係は以下の図で表される。 

f:id:TofuD:20160313064512p:plain

出所:GoldenCheetah

 

CPは長時間維持できるパワーの限界値で、出てくる数値はFTPに近い(たまに結構違うこともあるが)。CPについては以前に「クリティカルパワー(CP)の計算」という記事を書いたことがある。

 

CPは通常曲線で表されるが、上図ではW'をわかりやすく説明するために、あえて直線(≒FTP)にしていると推察される。1分走では早い時間でW'が枯渇し、5分走であれば時間をかけて枯渇するといった概念を示している。

 

W'とは、CPを超えたパワーを出した時に使う有限のエネルギー容量である。以前のGoldenCheetahではAWC(無酸素運動容量)と表されていた。W'の値に個人差はあるものの、10-40kJの範囲であるとされている。私は15-25kJの範囲に収まる傾向にある。

 

GoldenCheetahでは、20分と短時間(1-5分?)の数値を入れると、CPとW'を算出してくれる。こんなソフトがよく無料で利用できるなとつくづく思う。

 

以下の動画ではW'をバッテリーに喩えてわかりやすく説明している。

http://www.youtube.com/watch?v=86Sw3vOCq9U

 

W'が蓄えられるエネルギー最大容量だとすれば、W'balとは高強度用エネルギーのバッテリー残量のようなものだスマホにあるような残りOO%の表示である。40 GoalsではW'balがサイコンに表示されるようになる日も近いとの指摘がなされている。tauは回復量で充電速度を表す数値である。設定されたCPの値で決定されるようである。

 

Endurance Index(EI)は、W'/CPの値である。例えばW': 20,000、CP:250の場合、EIは80となる。フィジカルの変化が、W'のせいなのかCPのせいなのかを把握できそう。あくまで割合なので、高いからいいという数値ではないだろう。

 

ROE自己資本利益率)的に考えると、自分の有酸素系の体力(CP)に対して無酸素系の恩恵を受けられる大きさを表すということか。過去にW':28,000、CP:210で、この時のEIは133だったので、現在よりW'の恩恵を受けられていたということだろうか。いまいちよくわからない指標ではある。

 

主題にあるW'balはサイクリング状態だと100%である。CPを超えたパワーを出すとゼロに近づき、CP以下のパワーで脚を休めると自動回復する。スマホのバッテリーと違うのは、急速消費・急速充電であることだ。それゆえ"balance"という表現が適切なのだろう。

 

下の図は黒線がパワーで、赤い線がW'balである。横軸は時間を表している。

 

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出所:GoldenCheetah

 

図でみるとなんてことはないが、この場合の20分ワーク×2というのはCPを超える強度である。

 

GoldenCheetahでの活用

GoldenCheetah上で実際にログとして表される図表が以下になる。図中の赤線がW'bal、黄色線がパワー、灰色部分が標高を示す。

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 出所:筆者のGoldenCheetah

 

300W4分、レスト2-3分、300W2分、レスト2-3分のインターバルを行った時のデータである。

 

図中のW'balでは、踏んでいる時に13.4kJから4.2kJとなり、レストで12.9kJにまで回復、次の踏みで4.6kJに減っていることがわかる。なお、W'の設定が実態から乖離していたり、FTP測定等を行ったりすると、W'balがマイナスに突入していることがある。

 

結果として表中のW'bal Zonesに集約される。最初は意味がわからなかったが、高強度バッテリーを減らしていた時間を示すものと解釈している。脚の削られ度といってもよいだろう。

 

puyan氏の記事では、W'balを「追い込み度」と表現しており、私も同様の感覚を抱いている。

Golden Cheetah3.1正式版の新機能

 

それぞれのゾーンについて、感覚としてはこんな感じである。

 

W1:余裕

W2:ややきつい

W3:きつい

W4:ちぎれる/ちぎれた

 

表中右端の%はabove CP time÷時間で、あるゾーンにおいてCP以上で踏んでいた時間の割合を示していると思われる。じわじわと5分程度踏むことが多い場合は%が高く、1分でがばっと踏むことが多い時には%が低くなる傾向にある。

 

この指標を用いることで、練習やレース中にどのように踏んだか(踏まされたか)、ある瞬間での身体的な余裕度を追って観察できる。

 

GoldenCheetahでのデータ比較

◇方法

1."Activities"から2つ以上のワークを右方向にドラッグ&ドロップする

2."Ride"か"Stress"をクリックする

3.左下"Compare Activities and Intervals"の左端にある"ON""OFF"ボタンをクリックする。

 

◇特定のデータを比較したい場合

右上"More..."をクリックし、"All Chart Settings"の"Curves"から、データ項目を選択する。

◇特定の時間帯を細かく見たい場合

"Ride"や"Stress"の下にある□を左右に動かすと、表示範囲が変更できる。左右の矢印ボタンでスクロールする。

 

すると下図のような比較が可能となる。

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出所:筆者のGoldenCheetah 

 

あるルートを同様のメニューで行った時のデータを比較する。だいたい同じメニューではあるが、青い方の最後の1分が垂れているとか、そもそも標高の校正ができていないとかの情報が読み取れる。

 

生データを肴にして反省やシミュレーションを繰り返し、自転車脳を作ることはホビーレーサーにとっても有益であると思われる。こうしたことを繰り返せば木内野球ではないが一見不可解にも思える選択(あるいは刻々と変わる状況下での最適解)を自分なりのロジックで導けるようになるのかもしれない。私はちゃんとしたレースの経験がないのでよくわからないが。

 

なお、何が何でも勝ちたい人は自分のデータを公開することは賢明ではない。

 

Zwiftのメリット

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 デメリットを先に述べると、

・周辺機器を揃えるのがやや面倒くさい

・月10ドルの課金がある

・Zwiftなしでは室内ローラーのやる気が起きない

・直角コーナーで3本ローラーから落車しそうになることがある

などが挙げられる。

 

パワーメーター等(何らかの形でant+に対応しているもの)があれば、稲妻マーク付きのプレイは可能である。ヤフオクにあるようなノーブランド系のドングルはwindows対応としか記載されていない場合もあるが、今のところmacでも使えている。

 

メリットは、

・景色が変わるので苦痛が若干緩和される

・前後に人がいると苦しい場面で出力維持できる

・与えられたメニューがある(6 week FTP Builderなど)

・メニューをカスタマイズできる

・中の人の着せ替え可能(フルヌード不可)

 などが挙げられる。

 

個人的にはアイテム集めやミッションクリアにはあまり興味がないが、多様なワークアウトやそのカスタマイズに課金の価値があると思っている。

 

最初から用意されているメニューはたくさんあるので、自分の好きなメニューを選択できる。例えば上記画像に示すSST(Short)というワークアウトがあるが、40分連続SSTというキツいメニューのためギブアップした。

 

また理由はわからないがどの長さのSSTワークも5分ごとに、SSTの範囲内で目標パワーが上下する。実際にやってみると20分一定パワーよりも微妙に変化があって飽きにくい。

 

20分+20分(5分レスト)のSSTにしたい場合は、ワークアウトをカスタムできるので問題ない。

 

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インターバルごとに出力がキープされているか"PERFECT"や"FAILED"などのコメントで自動判定してくれる。こうしたコーチング的な要素は結構励みになる。なお、インターバルの途中に尻休め等で中断すると"FAILED"判定されることが多い。

 

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ちなみに自分で作成したタバタは後半ほとんど"FAILED"であった。

 

Zwiftに今後に期待される機能で噂レベルのものは、

 ・Zwift主催のレース/国別対抗戦

・課金してアイテムゲット

・3D対応

・ローラーとの連動による斜度変化

・世界各国の名所巡り

ペダリングモニターのベクトル表示

・ゲーセンに設置

・有望な若年層のスカウト

・プロまたはトレーナーによる有料コーチングサービス

・グランドセフトオートやマリオカート的な機能の搭載

 などが挙げられる。

 

ミノゲールやボツボツまで完全に再現されたヤビツ峠ルートが搭載されれば、日本でのZwift人口が爆発的に増えそうな気もするが、どうだろうか。

 

追記

ノーブランドのドングルがいったん通信が遮断されるとそのままになる不具合が発生したため、GARMINのドングルを新たに購入した。その後問題なし。

 

 

 

クリティカルパワー(CP)の計算

GoldenCheetahを使っていてCPやAWCの意味が気になったので整理する。

 

『パワー・トレーニング・バイブル』によると、運動強度と時間に関する理論にクリティカル・パワーというものがあるとのこと。1960年頃に発表されたオリジナルの方程式は以下になる。

 

**********************************************************

t = AWC/(P-CP)

 

t:疲労困憊するまでの時間、P:現在のパワー、CP:仕事量の漸近線、AWC:この式における比例定数 p.73

**********************************************************

 

引用終わり。単位として、tは秒数、PとCPはワット数、AWC(Anaerobic Work Capacity:無酸素作業容量)はJ(ジュール)である。

 

意味的にはPを平均パワーに置き換えてもよいだろう。GoldenCheetahではCPとAWCは自動的に算出されてくる。そうすると、ある時間において、維持できる限界の出力でペーシングしたい時のパワーを求められる。

 

t = AWC/(P-CP)

 

このオリジナルの方程式をPについて解くとこうなる。

 

P = AWC/t + CP

 

N=1だが実際の当てはまりはどうだろうか。GoldenCheetahによれば、直近28日のCPは213W、AWCは28kJ(28,000J)と出ているので所与の値として扱う。

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AWCの計算根拠はよくわからない。AWCを経験則から考えると、ごく初期のサイクリングでありがちな、実力以上に勢いよく走って失速するまでに使ったエネルギーだろうか。レース的に言えば、マッチの本数と大いに関連しているような気がする。5分で燃え尽きるのか、20分で燃え尽きるのか、それが問題だ。 

 

AWCは使い切ったその日には再生不可能と言われている。が、感覚的には脚が空っぽになった後でも、休憩すればマッチが数本復活している気がする。それは本当の意味では使い切ってないのかもしれないけど。

 

以下の実測値には、5分と20分のローラー台(AP)とそれ以外の坂の実走(NP)が混ざっているが、同列に扱って比較してみる。

 

表1.パワーの実測値と推計値の比較

時間 Stages実測値(1) 方程式から求めた値(2) (2)-(1)
44:14 222W 224W +2W
20:00 235W 236W +1W
8:11 284W 270W -14W
5:00 302W 306W +4W
1:00 452W 680W +228W

出所:筆者作成

 

5分〜44分は実測値とそれほど変わりない。しかし1分走は脚が売り切れに近い状態の値であったことを考慮にいれても、かなりの誤差が発生している。この値のズレは、ごく短時間のパワーにおいてAWCを過大評価してしまう方程式の性質や、私自身の脚質に依存するところが大きいと思われる。

 

無酸素運動容量の全てを1分で使い切るほどの筋肉はないとも言える。ちなみに計算上の5秒の値は5813Wである。これは脚がもげる。

 

なお60分以上のパワーは、『サイクリスト・トレーニング・バイブル』によると、以下の簡易的な計算で求められる。

 

30分CP×95% = 60分CP

60分CP×97.5% = 90分CP

90分CP×95% = 180分CP

 

参考文献

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