ゆるポタ日記

自転車関係などの雑記帳です。

Aerobic / Anaerobic TISSとは

GoldenCheetah3.3で、しれーっと追加されているTISSが気になった。

 

Aerobic / Anaerobic TISS(以下、Ae / An)とは、TSSを有酸素系と無酸素系に分けたもの、と理解している。

 

GoldenCheetah上では、Ae powerは5分以上のパワー、An powerは1分以下のパワーになっている。1分から5分の間はその中間ということだろうか。

 

TISS(Training Impact Scoring System)はグラフを見る限りではTSSと似たようなものである。TSSについては以前にこんな記事を書いたことがある。

GoldenCheetahのPMCにおける計算式

 

Ae TISSは、TSSと値は違うもののグラフの波形が近似していることから、ワークの大半を占める有酸素系に対する負荷を示していることがわかる。

 

An TISSは、Ae TISSとはグラフの波形が明らかに異なる。無酸素系(厳密に言えば無酸素ではないが)に刺激が入ることではじめてグラフが変化する。

 

GoldenCheetahの"Anaerobic Response"では、An TISS(Short Term Stress)が、W'およびp-maxと紐付けられている。つまり、無酸素領域に刺激が入った(W'balが動いた)→An TISSが溜められると推察される。

 

Anaerobic TISSの動き

ユーザー側がざっくりと理解するためには、実走からのデータを確認するのがてっとり早い。下図の青い線はAn TISS(Short Term Stress)、赤い線はAn TISS(Long Term Stress)である。

f:id:TofuD:20160315120608p:plain

出所:筆者のGoldenCheetah(①〜⑧は追記)

 

青い線に変化があった①から⑧の無酸素領域に入ったワークを思い出してみる。

 

① W'work: 33kJ, 20分240W, 1分400W

② W'work: 65kJ, 16分250W(間欠的に300-400W)

③ W'work: 62kJ, 200km(ごく一部300-500Wの信号ダッシュ)

④ W'work: 137kJ, 10km×10周(毎周250-350Wの坂インターバル)

⑤ W'work: 41kJ, 1分×5(400W前後、5分レスト、ローラー)

⑥ W'work: 151kJ, 150km(250-400Wの信号&坂インターバル)

⑦ W'work: 90kJ, 30-30秒300W×8, 1分400W以上×5, 2分350W×1

⑧ W'work: 32kJ, 120km(間欠的に300-400W)

 

こうしてみると高強度インターバルでじわじわ負荷をかけつつ、チーム練などの市中牽き回しの刑でガツンと無酸素系に刺激が入る傾向にある。なお、300kmブルベにおけるW'workは8kJと、ほとんど無酸素領域に入っていない。

 

肝心なことはAn TISSが溜まることで、どのような能力の向上が予測できるかということだが、無酸素領域のパフォーマンスに関連していることは明らかである。具体的には、W'、p-max、1分パワーや繰り返し能力、あるいは回復速度の向上に関連しているのではないだろうか。日本では競輪学校が無酸素系領域の強化に関するノウハウを蓄積しているはず。

 

→「自転車トレーニングの理論」CS-net

 

 

W'balとは

W'bal (W' balance) とは、高強度用エネルギーのバッテリー残量、と解釈している。

 

W'は「ダブリュープライム」と発音する。「わらてん」ではない。

 

以下は『40 Goals: W'bal its implementation and optimisation』と『GoldenCheetah』の受け売りである。

 

2015年末にGoldenCheetah3.3がアップデートされ、W'関連の解析がより充実した。W'についてほとんど知らなかったため上記サイトで理解を深める。客観的な指標重視のホビーレーサーにとっては、W'balは非常に重要な概念であると思われる。

 

W'とCPの関係は以下の図で表される。 

f:id:TofuD:20160313064512p:plain

出所:GoldenCheetah

 

CPは長時間維持できるパワーの限界値で、出てくる数値はFTPに近い(たまに結構違うこともあるが)。CPについては以前に「クリティカルパワー(CP)の計算」という記事を書いたことがある。

 

CPは通常曲線で表されるが、上図ではW'をわかりやすく説明するために、あえて直線(≒FTP)にしていると推察される。1分走では早い時間でW'が枯渇し、5分走であれば時間をかけて枯渇するといった概念を示している。

 

W'とは、CPを超えたパワーを出した時に使う有限のエネルギー容量である。以前のGoldenCheetahではAWC(無酸素運動容量)と表されていた。W'の値に個人差はあるものの、10-40kJの範囲であるとされている。私は15-25kJの範囲に収まる傾向にある。

 

GoldenCheetahでは、20分と短時間(1-5分?)の数値を入れると、CPとW'を算出してくれる。こんなソフトがよく無料で利用できるなとつくづく思う。

 

以下の動画ではW'をバッテリーに喩えてわかりやすく説明している。

http://www.youtube.com/watch?v=86Sw3vOCq9U

 

W'が蓄えられるエネルギー最大容量だとすれば、W'balとは高強度用エネルギーのバッテリー残量のようなものだスマホにあるような残りOO%の表示である。40 GoalsではW'balがサイコンに表示されるようになる日も近いとの指摘がなされている。tauは回復量で充電速度を表す数値である。設定されたCPの値で決定されるようである。

 

Endurance Index(EI)は、W'/CPの値である。例えばW': 20,000、CP:250の場合、EIは80となる。フィジカルの変化が、W'のせいなのかCPのせいなのかを把握できそう。あくまで割合なので、高いからいいという数値ではないだろう。

 

ROE自己資本利益率)的に考えると、自分の有酸素系の体力(CP)に対して無酸素系の恩恵を受けられる大きさを表すということか。過去にW':28,000、CP:210で、この時のEIは133だったので、現在よりW'の恩恵を受けられていたということだろうか。いまいちよくわからない指標ではある。

 

主題にあるW'balはサイクリング状態だと100%である。CPを超えたパワーを出すとゼロに近づき、CP以下のパワーで脚を休めると自動回復する。スマホのバッテリーと違うのは、急速消費・急速充電であることだ。それゆえ"balance"という表現が適切なのだろう。

 

下の図は黒線がパワーで、赤い線がW'balである。横軸は時間を表している。

 

f:id:TofuD:20160313064654p:plain

出所:GoldenCheetah

 

図でみるとなんてことはないが、この場合の20分ワーク×2というのはCPを超える強度である。

 

GoldenCheetahでの活用

GoldenCheetah上で実際にログとして表される図表が以下になる。図中の赤線がW'bal、黄色線がパワー、灰色部分が標高を示す。

f:id:TofuD:20160313071648p:plain

f:id:TofuD:20160313071633p:plain

 出所:筆者のGoldenCheetah

 

300W4分、レスト2-3分、300W2分、レスト2-3分のインターバルを行った時のデータである。

 

図中のW'balでは、踏んでいる時に13.4kJから4.2kJとなり、レストで12.9kJにまで回復、次の踏みで4.6kJに減っていることがわかる。なお、W'の設定が実態から乖離していたり、FTP測定等を行ったりすると、W'balがマイナスに突入していることがある。

 

結果として表中のW'bal Zonesに集約される。最初は意味がわからなかったが、高強度バッテリーを減らしていた時間を示すものと解釈している。脚の削られ度といってもよいだろう。

 

puyan氏の記事では、W'balを「追い込み度」と表現しており、私も同様の感覚を抱いている。

Golden Cheetah3.1正式版の新機能

 

それぞれのゾーンについて、感覚としてはこんな感じである。

 

W1:余裕

W2:ややきつい

W3:きつい

W4:ちぎれる/ちぎれた

 

表中右端の%はabove CP time÷時間で、あるゾーンにおいてCP以上で踏んでいた時間の割合を示していると思われる。じわじわと5分程度踏むことが多い場合は%が高く、1分でがばっと踏むことが多い時には%が低くなる傾向にある。

 

この指標を用いることで、練習やレース中にどのように踏んだか(踏まされたか)、ある瞬間での身体的な余裕度を追って観察できる。

 

GoldenCheetahでのデータ比較

◇方法

1."Activities"から2つ以上のワークを右方向にドラッグ&ドロップする

2."Ride"か"Stress"をクリックする

3.左下"Compare Activities and Intervals"の左端にある"ON""OFF"ボタンをクリックする。

 

◇特定のデータを比較したい場合

右上"More..."をクリックし、"All Chart Settings"の"Curves"から、データ項目を選択する。

◇特定の時間帯を細かく見たい場合

"Ride"や"Stress"の下にある□を左右に動かすと、表示範囲が変更できる。左右の矢印ボタンでスクロールする。

 

すると下図のような比較が可能となる。

f:id:TofuD:20160314120059p:plain

出所:筆者のGoldenCheetah 

 

あるルートを同様のメニューで行った時のデータを比較する。だいたい同じメニューではあるが、青い方の最後の1分が垂れているとか、そもそも標高の校正ができていないとかの情報が読み取れる。

 

生データを肴にして反省やシミュレーションを繰り返し、自転車脳を作ることはホビーレーサーにとっても有益であると思われる。こうしたことを繰り返せば木内野球ではないが一見不可解にも思える選択(あるいは刻々と変わる状況下での最適解)を自分なりのロジックで導けるようになるのかもしれない。私はちゃんとしたレースの経験がないのでよくわからないが。

 

なお、何が何でも勝ちたい人は自分のデータを公開することは賢明ではない。

 

Zwiftのメリット

f:id:TofuD:20160303095752j:plain

 

 デメリットを先に述べると、

・周辺機器を揃えるのがやや面倒くさい

・月10ドルの課金がある

・Zwiftなしでは室内ローラーのやる気が起きない

・直角コーナーで3本ローラーから落車しそうになることがある

などが挙げられる。

 

パワーメーター等(何らかの形でant+に対応しているもの)があれば、稲妻マーク付きのプレイは可能である。ヤフオクにあるようなノーブランド系のドングルはwindows対応としか記載されていない場合もあるが、今のところmacでも使えている。

 

メリットは、

・景色が変わるので苦痛が若干緩和される

・前後に人がいると苦しい場面で出力維持できる

・与えられたメニューがある(6 week FTP Builderなど)

・メニューをカスタマイズできる

・中の人の着せ替え可能(フルヌード不可)

 などが挙げられる。

 

個人的にはアイテム集めやミッションクリアにはあまり興味がないが、多様なワークアウトやそのカスタマイズに課金の価値があると思っている。

 

最初から用意されているメニューはたくさんあるので、自分の好きなメニューを選択できる。例えば上記画像に示すSST(Short)というワークアウトがあるが、40分連続SSTというキツいメニューのためギブアップした。

 

また理由はわからないがどの長さのSSTワークも5分ごとに、SSTの範囲内で目標パワーが上下する。実際にやってみると20分一定パワーよりも微妙に変化があって飽きにくい。

 

20分+20分(5分レスト)のSSTにしたい場合は、ワークアウトをカスタムできるので問題ない。

 

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インターバルごとに出力がキープされているか"PERFECT"や"FAILED"などのコメントで自動判定してくれる。こうしたコーチング的な要素は結構励みになる。なお、インターバルの途中に尻休め等で中断すると"FAILED"判定されることが多い。

 

f:id:TofuD:20160303101803j:plain

 

ちなみに自分で作成したタバタは後半ほとんど"FAILED"であった。

 

Zwiftに今後に期待される機能で噂レベルのものは、

 ・Zwift主催のレース/国別対抗戦

・課金してアイテムゲット

・3D対応

・ローラーとの連動による斜度変化

・世界各国の名所巡り

ペダリングモニターのベクトル表示

・ゲーセンに設置

・有望な若年層のスカウト

・プロまたはトレーナーによる有料コーチングサービス

・グランドセフトオートやマリオカート的な機能の搭載

 などが挙げられる。

 

ミノゲールやボツボツまで完全に再現されたヤビツ峠ルートが搭載されれば、日本でのZwift人口が爆発的に増えそうな気もするが、どうだろうか。

 

追記

ノーブランドのドングルがいったん通信が遮断されるとそのままになる不具合が発生したため、GARMINのドングルを新たに購入した。その後問題なし。

 

 

 

クリティカルパワー(CP)の計算

GoldenCheetahを使っていてCPやAWCの意味が気になったので整理する。

 

『パワー・トレーニング・バイブル』によると、運動強度と時間に関する理論にクリティカル・パワーというものがあるとのこと。1960年頃に発表されたオリジナルの方程式は以下になる。

 

**********************************************************

t = AWC/(P-CP)

 

t:疲労困憊するまでの時間、P:現在のパワー、CP:仕事量の漸近線、AWC:この式における比例定数 p.73

**********************************************************

 

引用終わり。単位として、tは秒数、PとCPはワット数、AWC(Anaerobic Work Capacity:無酸素作業容量)はJ(ジュール)である。

 

意味的にはPを平均パワーに置き換えてもよいだろう。GoldenCheetahではCPとAWCは自動的に算出されてくる。そうすると、ある時間において、維持できる限界の出力でペーシングしたい時のパワーを求められる。

 

t = AWC/(P-CP)

 

このオリジナルの方程式をPについて解くとこうなる。

 

P = AWC/t + CP

 

N=1だが実際の当てはまりはどうだろうか。GoldenCheetahによれば、直近28日のCPは213W、AWCは28kJ(28,000J)と出ているので所与の値として扱う。

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AWCの計算根拠はよくわからない。AWCを経験則から考えると、ごく初期のサイクリングでありがちな、実力以上に勢いよく走って失速するまでに使ったエネルギーだろうか。レース的に言えば、マッチの本数と大いに関連しているような気がする。5分で燃え尽きるのか、20分で燃え尽きるのか、それが問題だ。 

 

AWCは使い切ったその日には再生不可能と言われている。が、感覚的には脚が空っぽになった後でも、休憩すればマッチが数本復活している気がする。それは本当の意味では使い切ってないのかもしれないけど。

 

以下の実測値には、5分と20分のローラー台(AP)とそれ以外の坂の実走(NP)が混ざっているが、同列に扱って比較してみる。

 

表1.パワーの実測値と推計値の比較

時間 Stages実測値(1) 方程式から求めた値(2) (2)-(1)
44:14 222W 224W +2W
20:00 235W 236W +1W
8:11 284W 270W -14W
5:00 302W 306W +4W
1:00 452W 680W +228W

出所:筆者作成

 

5分〜44分は実測値とそれほど変わりない。しかし1分走は脚が売り切れに近い状態の値であったことを考慮にいれても、かなりの誤差が発生している。この値のズレは、ごく短時間のパワーにおいてAWCを過大評価してしまう方程式の性質や、私自身の脚質に依存するところが大きいと思われる。

 

無酸素運動容量の全てを1分で使い切るほどの筋肉はないとも言える。ちなみに計算上の5秒の値は5813Wである。これは脚がもげる。

 

なお60分以上のパワーは、『サイクリスト・トレーニング・バイブル』によると、以下の簡易的な計算で求められる。

 

30分CP×95% = 60分CP

60分CP×97.5% = 90分CP

90分CP×95% = 180分CP

 

参考文献

関連記事

GoldenCheetahのPMCにおける計算式

ランの負荷であるTRIMPを疑似TSSにする

 

あざみラインのヒルクライム偏差値(あるいは実業団選手の脚力の目安)

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全長11.4km、標高差1200m、平均勾配10%という日本屈指の激坂である。私はまともに登れたためしがない。砂の富士山を作っていたら、翌日にハムストリングが酷い筋肉痛になった。

 

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あざみライン偏差値詳細は当該ページの一番下を参照のこと。

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馬返し後の押し歩きやグレーチングでの落車は想定できるが、今までと同じくリザルトだけをみていく。

 

表1.あざみヒルクライム偏差値(2015年基準)

偏差値 タイム 推定PWR(60分) 上位からの位置 備考
75 44:20 5.50 1%  
70 46:55 5.17 2%  
65 49:55 4.85 7% 富士ヒルゴールド相当
60 53:20 4.53 16%  
55 57:10 4.21 31%  
50 61:40 3.91 50% 富士ヒルシルバーやや未達
45 66:50 3.61 69%  
40 73:00 3.31 84% 富士ヒルブロンズ相当
35 80:30 3.00 93%  
30 89:45 2.70 98%  
25 91:10 2.40 99%  

出所:筆者作成。富士山ヒルクライムのE1、E2、E3クラスタおよび富士山国際ヒルクライムのエキスパートと男子(以下、一般男子)のリザルトに基づく(2015年6月閲覧)。N=644

 

図1.E1、E2、E3および一般男子のタイム分布

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 出所:筆者作成。91分台以降は省略。E1、E2、E3および一般男子。N=644

 

個別にみるとアマチュア最速は45分50秒である。また60歳代以降で56分台という凄まじい記録がある。上の集計データには含まれてはないが、MTBでの最速は1時間1分台とこれまた凄い。

 

図2.あざみヒルクライム推定PWR(60分)の分布

f:id:TofuD:20150626204635p:plain

出所:筆者作成。E1、E2、E3および一般男子。推計方法は「Mt.富士ヒルクライムのヒルクライム偏差値」等と同じ。N=644

 

実業団も含めてのデータではあるが、平均値が4.0W/kg付近と他の大規模なヒルクライム大会と比べて母集団のPWRが著しく高い。データ上からも初心者お断りの大会であることがよくわかる。

 

図3.P1のタイム分布

f:id:TofuD:20150626210939p:plain

 出所:筆者作成。N=76

 

タイムのまとまり具合はさすがプロである(若干アマもいるが)。P1の最速はホセ・ビセンテ選手の41分34秒である。ヤビツ換算(名古木)だと約27分45秒と推定され、異次元の速さである。27分だと普通の人は菜の花台すら通過していない。

 

図4.P1の推定PWR(60分)の分布

f:id:TofuD:20150626212048p:plain

出所:筆者作成。推計方法は「Mt.富士ヒルクライムヒルクライム偏差値」等と同じ。N=76

 

図5 プロとアマの推定PWR(60分)の比較

f:id:TofuD:20150629131124p:plain

 出所:筆者作成。N=720(P1=76、E1=70、E2=90、E3=149、一般男子=335)

 

60分のPWRのみをみると、プロを上回る登坂能力を持つアマチュアが一定数いる。ただし、アマチュアはクライマー寄りの選手が多い可能性と、プロはクライマーからスプリンターまで様々な脚質を持つ選手が参戦している可能性があるので、その辺を差し引いて見る必要がある。

 

なお、PWRの数値はあくまで登坂能力に限定されたもので、ヒルクライム以外のレースで重要となる1〜5分のパワーや繰り返し能力と必ずしも関連しない。こうした短時間のパワー等は実際に現場で一定区間のタイムを計るか、映像から推定するしかないだろう。

 

表2.富士山ヒルクライム大会(2015年)の推定PWR(60分)の基本統計量

カテゴリ 平均 最小値 中央値 最大値 標準偏差
P1 4.92 3.79 4.87 5.89 0.41
E1 4.52 3.24 4.55 5.24 0.42
E2 4.15 3.02 4.14 5.30 0.45
E3 4.05 2.47 4.11 5.21 0.49
一般男子 3.66 2.23 3.70 5.30 0.60

 出所:筆者作成

 

ところでプロがアマと同じ日に時刻をずらして同じコースを走るというのは、自転車大会の運営をよく知らない者からすると不思議である。野球でいうなら、東京ドームで巨人阪神戦の前に、社会人野球や高校野球が行われるようなものである。

 

私の理解がいろいろと不足しているのかもしれないが、お金を貰って走る人とお金を払ってまで走りたい人が、同じような扱われ方でレースに参加しているようにみえる。公道レースという競技の特性上、観客からお金を取るのは極めて難しい。率直な疑問として、プロチームの収入源は何だろうというのがある。

 

別の観点でみれば、それほど高くはない費用で、ある程度限定された選手が集まるレースに参加でき、ついでにプロのレースもみられるという良い環境があるとも言える。

 

 

 

表3.あざみラインのヒルクライム偏差値詳細(2015年基準)

偏差値 タイム 推定PWR(60分) 備考
75 44:20 5.50 これ以上のP1は8名
74 44:50 5.44  
73 45:20 5.37  
72 45:50 5.30 P1以外での最速(2015年)
71 46:25 5.24  
70 46:55 5.17  
69 47:30 5.10  
68 48:05 5.04  
67 48:45 4.97  
66 49:20 4.91  
65 49:55 4.85 富士ヒルゴールド相当
64 50:35 4.79  
63 50:15 4.73  
62 51:55 4.66  
61 52:35 4.59  
60 53:20 4.53  
59 54:00 4.47  
58 54:45 4.41  
57 55:35 4.33  
56 56:20 4.27  
55 57:10 4.21  
54 58:10 4.15  
53 58:55 4.09  
52 59:45 4.03 富士ヒルシルバー相当
51 60:40 3.97  
50 61:40 3.91  
49 62:40 3.85  
48 63:40 3.77  
47 64:40 3.71  
46 65:45 3.67  
45 66:50 3.61  
44 68:00 3.55  
43 69:15 3.47  
42 70:25 3.43  
41 71:45 3.37  
40 73:00 3.31  
39 74:30 3.25 富士ヒルブロンズ相当
38 75:55 3.18  
37 77:30 3.11  
36 79:00 3.06  
35 80:30 3.00  
34 82:15 2.94  
33 84:00 2.88  
32 85:50 2.82  
31 87:50 2.76  
30 89:45 2.70  
29 91:50 2.64  
28 94:05 2.58  
27 96:20 2.53  
26 98:40 2.47  
25 91:10 2.40  

 出所:筆者作成。E1、E2、E3および一般男子のリザルトに基づく。

 

ランの負荷であるTRIMPを疑似TSSにする

ランも始めたがバイクのTSSはどうしようかということの1つの解決法を示す。パワメ解析ソフトにTSSを手動入力できることが前提となる。

 

ランの負荷を数値で計りたい場合には、心拍ベースの何かになる。その何かとはTRIMPなのだが、TSSと必ずしも近似値ではない(近似値の場合もある)。スイムに関しても心拍が計ることができれば負荷を計上できる。

 

TRIMPはTSSの代わりとしてパーフェクトではないにしても、何も管理しないよりはベターだろう。

 

参考にしたサイトは、TRIMP - Fellrnr.com, Running tipsである。TRIMPとは、TRainingIMPulseの頭文字を取ったものとある。

 

ExponentialのTRIMPが当てはまりが良さそうな気がするので、以下にその計算手順を示す。

 

表1.TRIMP簡易計算(excel

f:id:TofuD:20150624095620p:plain

 

"あなたのTRIMP" = "第1項" × "第2項" × "第3項"となる。

 

表1の赤い行は予め入力しておくところである。これらの数字をセルに入力する。

 

eは数学的に重要な定数らしくYahoo!知恵袋に解説があるが、私は全く理解出来なかった。

 

表1の青い行には自分の数字を入れる。上ではfellrnr.comの数字をそのまま使用している。

 

"第1項" =B6

 →時間(分)

"第2項" =(E6-D6)/(C6-D6)

 →(平均心拍数-安静時心拍数)÷(最大心拍数-安静時心拍数)

"第3項" =E3*D3^(B3*(E6-D6)/(C6-D6))

 →0.64e^y(詳細は上記サイトを参照)

 

結果的に"あなたのTRIMP"が"31.8"(四捨五入で32)になればTRIMP簡易計算のフォーマットは完成である。

 

あとはパワーメーター解析ソフトにTSSとして入力すれば、ATLやCTLがもっともらしい感じになる。

 

ところで、坂を駆け下りたりハイキングで山下りを行う時に、心拍計が頻繁にずり下がるのが気になる場合は、心拍計をブラ化する必要がある。

 

ゴムひもを手芸用品コーナーで買って縫い付けるだけだ。ゴムひもを後ろでクロスさせるとより確実に固定できる。

 

ここでブラ型心拍計の姿を見られた時において、周囲から気持ち悪いと言われる(思われる)ことと確実にTRIMPで数値管理できることのトレードオフがある。しかしこれを読んでいる時点でどちらを選択するかは既に明白だろう。

関連記事

GoldenCheetahのPMCにおける計算式

クリティカルパワー(CP)の計算

 

全日本マウンテンサイクリングin乗鞍ヒルクライム偏差値

フルコースは全長20.5km、獲得標高1260m、平均勾配6.1%である。2年連続で荒天のためコースが短くなっているが2015年はどうだろうか。

  

乗鞍岳の天気」てんきとくらす

 

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詳細な偏差値などはページ最下部を参照のこと。

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第30回大会(2015年)の抽選に当たったので、目安を把握することにした。

 

フルコースで行われた直近の大会が第27回(2012年)のため、その年度のデータをもとにしている。データ分析やPWR推計の手法は「Mt.富士ヒルクライムのヒルクライム偏差値」と同じである。

 

表1.乗鞍ヒルクライム偏差値(2012年基準)

偏差値 タイム 推定PWR(60分) 上位からの位置 備考
75 59:45 4.97 1% 富士ヒルゴールド相当
70 1:04:10 4.56 2%  
65 1:09:15 4.16 7% 富士ヒルシルバー相当
60 1:15:10 3.79 16%  
55 1:22:20 3.43 31% 富士ヒルブロンズ相当
50 1:30:55 3.08 50%  
45 1:41:30 2.74 69%  
40 1:54:50 2.42 84%  
35 2:12:20 2.10 93%  
30 2:36:00 1.80 98%  
25 3:10:00 1.51 99%  

出所:筆者作成。J-entryの2012年リザルトのデータに基づく(2015年6月閲覧)。以下同じ。

 

次に完走者のタイムの分布を図1に示す。

 

図1.2012年乗鞍ヒルクライム完走者(男子)のタイム分布

f:id:TofuD:20150623111014p:plain

出所:筆者作成。N=3608

 

60分から10分おきに棒を赤くしている。この年は55分台の選手はいなかったので56分台からになる。160分台以降の選手はひとまとめにしている。

 

90分切りを目標にしている選手が比較的多いのか、88分台、89分台で続々とゴールしている。

 

図2.2012年乗鞍ヒルクライム完走者の推定PWR(60分)の分布

f:id:TofuD:20150626123652p:plain

出所:筆者作成。N=3608

 

3.0W/kgを中心としてきれいに人数が減っているのがわかる。2014年のMt.富士ヒルクライムと比較してみる。

 

図3.乗鞍ヒルクライムと富士ヒルクライムの推定PWR(60分)の比較

f:id:TofuD:20150626123712p:plain

出所:筆者作成。乗鞍のN=3608、富士ヒルのN=5648

 

どちらのヒルクライム大会も出たことはないので実際の雰囲気はわからないが、グラフを見ると富士ヒルの方が明らかに初心者が多いと思われる。乗鞍だと初心者が減っているためか、グラフの山が左寄りになっている。

 

言い換えれば、富士ヒル母集団よりも乗鞍母集団の方が脚力が高い。それは乗鞍の推定PWR(60分)の中央値が3.08W/kg(表2)に対して、富士ヒルのそれは2.78W/kgであることからも確認できる。

 

表2.乗鞍ヒルクライム(2012年)の基本統計量

変数 平均 最小値 中央値 最大値 最頻値 標準偏差
タイム 1:35:27 56:17 1:30:42 3:49:17 1:24:09 22:57
60分PWR(W/kg) 3.10 1.29 3.08 5.35 3.34 0.69

 

ところでエントリーの際に、サイクリング協会に会費を払うと優先的に乗鞍エントリーが可能とあった。J-entryを見ると、抽選に漏れた後で会費を払うから出させてくれ的なことがあると暗に示されていた。

 

そこで会費じゃなくて松本市へのふるさと納税で優先エントリーになったらとふと思った。乗鞍の運営主体の1つである松本市への寄付金はH26年度で約550万とのことである。仮に協会会費枠を500名、ふるさとヒルクラ納税枠を500名とする。乗鞍に出たい人が5000人いるとして、その10%がヒルクラ納税を行うとする。1万円から優先枠を手に入れられ、徴税コストを無視するならば、ヒルクラ納税のみで松本市は約500万の収入を得られる。納付金の納付を行った者が500名を超えた場合、納付額の高い人から優先枠を得られる。みたいなことを松本市を受験する公務員志望の人が面接試験で提言をし、その人が採用になるかどうかは別として、節税メリットもあるヒルクラ納税が可能になればいいのになあ。野沢菜漬けが郵送されるとなお良い。

 

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表3.乗鞍ヒルクライム偏差値詳細(2012年基準)

偏差値 タイム 推定PWR(60分) 備考
80 55:55 5.39 神の領域
79 56:40 5.32  
78 57:25 5.23  
77 58:10 5.14  
76 58:55 5.06  
75 59:45 4.97  
74 60:35 4.88 富士ヒルゴールド相当
73 61:25 4.80  
72 62:20 4.71  
71 63:15 4.63  
70 64:10 4.56  
69 65:05 4.48  
68 66:05 4.39  
67 67:05 4.31  
66 68.10 4.23  
65 69.15 4.16  
64 70:25 4.08 富士ヒルシルバー相当
63 71:30 4.01  
62 72:40 3.93  
61 73:55 3.85  
60 75:10 3.79  
59 76:30 3.72  
58 77:55 3.64  
57 79:20 3.56  
56 80:45 3.49  
55 82:20 3.43  
54 83:55 3.35  
53 85:30 3.29 富士ヒルブロンズ相当
52 87:15 3.21  
51 89:00 3.14  
50 90:55 3.08  
49 92:50 3.00  
48 94:50 2.94  
47 96:55 2.88  
46 99:10 2.80  
45 101:30 2.74  
44 104:00 2.67  
43 106:30 2.61  
42 109:05 2.54  
41 112:00 2.48  
40 114:50 2.42  
39 118:00 2.35  
38 121:20 2.29  
37 124:40 2.22  
36 128:20 2.16  
35 132:20 2.10  
34 136:25 2.04  
33 140:50 1.98  
32 145:30 1.92  
31 150:30 1.86  
30 156:00 1.80  
29 162:00 1.74  
28 168:00 1.68  
27 174:30 1.62  
26 182:00 1.56  
25 190:00 1.51  

 出所:筆者作成